学び舎は渋谷パルコ、ディレクターは「リトゥン」山縣デザイナー 10代限定のカルチャースクールとは?
WWD:なぜ10代?
山縣ディレクター:日本の教育現場をリサーチする中で、10代の若者が芸術分野を自由に学べる場が不足していることに気づいたから。小学生向けにはワークショップや塾が比較的存在するし、成人対象には専門学校や大学などの専門機関がある。それに比べると、その間の年代には体験の場が設けられていない。日本では、小学生には「何でも自由にやってOK」という空気を醸し出しているが、中学生や高校生に対して、大人は急に保守的な態度を取り、受験に直結する勉強をさせ始めてしまう。10代という時期は、多感な彼らのキャリアパスに大きな影響を与える。「何になりたいか分からないけどとりあえず受験勉強をやっておこう」とならざるを得ない教育環境に疑問を覚え、彼らがリベラルアーツに触れ、いろいろな選択の可能性を体験できる空間を作りたいと考えた。
10代に真正面からぶつかるために
個性的なシラバス設計
WWD:具体的にどんな授業を行う?
杉田:例えば今年は、サステナビリティを軸にしたクラスを3つ開講している。そのうちの一つである“サステナビリティ×ファッション”がテーマの「わたしたちのファッション表現」では、ファッションと環境問題の関連性を踏まえ、「それでもファッションに何ができるか?」という思索を深めていく。最終ゴールは、ファッションと地球のより良い関係を実現するファッション表現をプレゼンテーションすること。ファッションの専門学校を卒業し、「リトゥンアフターワーズ」でクリエイションの経験を詰んだ大草さんや、「WWDJAPAN」の向千鶴サステナビリティ・ディレクターらのアドバイスを受けながら、生徒は修了制作に挑む。
おもしろい講座が目白押しだが、“サステナビリティ×食”がテーマの「限界美食論」も個性的な内容に仕上がった。持続可能性に関して革新的な取り組みをする飲食店であることを示すミシュランの「グリーンスター」を獲得したフレンチレストラン「ノル(NOL)」とコラボレーションし、同店の野田達也シェフ兼ディレクターを講師に招く。11月から来年3月まで、全7回の授業を通して新たな食事のあり方を考える内容だ。「食が地球環境に及ぼす影響は?」「地球を傷つけずにおいしい食事を実現するには?」「そもそも自分にとっての“おいしい”とは?」などをティーンエイジャーと議論しつつ、オリジナルレシピを開発し、盛り付けについても学ぶ。