【菊花賞】史上4人目の菊連覇 ルメールが複数のお手馬からアーバンシックを選んだ理由とは?
[GⅠ菊花賞=2024年10月20日(日曜)3歳、京都競馬場・芝外3000メートル] 20日、京都競馬場で行われたクラシック3冠最終戦のGⅠ菊花賞(芝外3000メートル)は、ルメール騎乗で2番人気のアーバンシック(牡・武井)が2着に2馬身半差をつけて完勝。皐月賞4着、日本ダービー11着の雪辱を果たし、菊の大輪を咲かせた。その勝因は何だったのか? 陣営の言葉から、要因を探る。
プレッシャーから自信に
ルメールの菊花賞は、ゲートが開くよりはるか前から始まっていた。 「プレッシャーがありましたね。(菊花賞出走馬のうち)前走で4頭に乗りました。アーバンシックを選んでどんな結果を出せるか心配したけれど、パドックで馬を見たときは自信がありました」 勝ち馬を含めて上位3頭(2着ヘデントール、3着アドマイヤテラ)は直近でルメールが勝利に導いた馬たち。名手にとって、選択の正しさを証明する戦いでもあった。 では、なぜアーバンシックを選んだのか?の問いに「菊花賞を勝つためにはタフさが必要。アーバンシックは春から重賞レベルで使いましたし、彼がタフだと思いました」とルメール。もちろん、ただ強いと思う馬を選べば勝てるわけでもない。レースでもヘッドワークが際立った。
乱戦で光った巧みな立ち回り
レース序盤で先頭に立ったのはエコロヴァルツだったが、スタンド前でノーブルスカイ、さらにメイショウタバルがかわしていく。それにとどまらず、2コーナー手前で今度はピースワンデュックがハナに立つという出入りの激しい展開。アーバンシックは1周目ゴール板付近で、後ろから数えた方が早い位置取りだった。しかし、少しずつポジションを押し上げて中団に構えたかと思えば一旦待ち、外から動いた武豊アドマイヤテラ(3着)を先に行かせる。4角から徐々に促されると、残り200メートルでは楽に先頭に立ち、独走態勢を築いた。 我慢を利かせて勝機をうかがい、最適なときに仕掛けて先頭でゴールを切る。変幻自在の手綱さばきで勝利へ導いた昨年のドゥレッツァも記憶に残っているうちに、名手の手綱はさえわたった。菊花賞連覇は史上4人目で、菅原泰夫(1981年ミナガワマンナ、82年ホリスキー)以来、42年ぶりだ。 ルメール自身は内枠を希望していたというが、見守った武井調教師の言葉を借りれば「ジョッキーはそう言っていたけれど、結局何とかしてくれるだろう」。偽らざる本心に違いない。ルメールに選ばれ、ルメールが駆った…ということが要因のひとつに挙げられる。 では、アーバンシック自身はいかに。成長途上ではある中で「春に比べて子供な面も解消してきて、競馬や返し馬の雰囲気も大人になっている。本来持っている彼の能力を引き出せた」と武井師はその勝因にメンタルを強調する。
父譲りの成長力で
それでも「スタートはいつも遅いし、直線では頭を上げる。パワーアップして、もっとGⅠでも結果を出してくれそう」(ルメール)で、陣営は成長途上という認識。4歳時に大阪杯、5歳時にジャパンCを制した父スワーヴリチャードのように、古馬になってからのさらなるステップアップが期待されるところだ。 次走は未定だが、今後は年長馬との戦いが待っている。頼れる主戦ルメールは、絶対的な相棒イクイノックスが引退した後も引く手あまた。〝次〟はどんな走りを見せてくれるのか、そしてルメールに選ばれ続ける馬になるのか-。この菊花賞で、最注目のトップホースが誕生したと言っても決して過言ではないだろう。
和田 慎司