エスパー伊東さん逝去。18年発表・治療していた「変形性股関節症」の原因や予防法を医師が解説
変形性股関節症の診断と治療
編集部: 変形性股関節症はどのように診断されますか? 甲斐沼先生: 問診とレントゲン検査が主な診断方法です。問診では、発育性(先天性)股関節形成不全と今までに診断されたことがあるか、家族に変形性股関節症の人はいるか、他にも仕事内容やどのようなスポーツを行ってきたかを聴取します。 家族に変形性股関節症の人がいるか確認するのは、遺伝する可能性があるためです。また、どのくらい痛むか・どこが痛むか・日常生活で困っていることも聴取します。 レントゲン検査では、寛骨臼の形成不全はないか、骨頭と寛骨臼の間が狭くなっていないかを確認します。変形性股関節症の診断には他にもMRI検査・CT検査が補助的な診断として有用です。 MRI検査やCT検査によって骨の状態を立体的に観察することができるなど、股関節の状態をより細かく観察することができます。 編集部: 保存療法ではどのような治療が行われますか? 甲斐沼先生: 保存療法では、第一に股関節への負担を軽減することを考えます。重い物を運ぶ仕事をしている場合には、関節への負担が少ない仕事の部署へ異動できないか職場に相談しましょう。 若い人の場合、杖を使うことに抵抗があるかもしれませんが、可能であれば歩く時には杖を使用することをおすすめします。この時、痛みが出る足と反対側の手で杖をつくようにしましょう。 適度な運動も必要です。股関節の周りの筋肉が強くなることで、股関節が安定し、痛みが和らぐことが期待できます。運動としておすすめなのが、有酸素運動・筋力トレーニング・水泳・水中歩行です。 筋力トレーニングでは、おしりの横の筋肉や太ももの前面の筋肉を鍛えることを意識します。横向きに寝て上側の足を伸ばしたまま天井に向けて上げたり、仰向けで足を延ばしたまま天井に向けて上げたりするとよいでしょう。 編集部: 手術が行われるのはどのような場合ですか? 甲斐沼先生: 保存療法でも痛みがよくならない場合や、発見が遅く股関節の損傷が重度の場合には手術が必要です。 手術には、骨を切って股関節の形を整える骨切り術と呼ばれる方法と、股関節自体を人工関節に変えてしまう人工関節全置換術があります。どちらの手術を行うかは、関節の損傷の程度で決まります。 骨切り術は若ければ若いほど術後成績が良く、痛みがよくなったり、関節損傷の進行を予防したりする効果がある手術です。そのため、発症年齢が若い場合にはまず骨切り術を考慮します。 人工関節全置換術は、痛みを取る効果が高く、歩きやすくなることで生活の質が上がったと実感する方が多い手術です。骨切り術より優れているように感じるかもしれませんが、人工関節には寿命があるため若いうちに人工関節全置換術を行うと将来また手術をしなければならない可能性もあります。 人工関節の寿命は10~15年といわれることが多いですが、医学の進歩とともに人工関節の寿命も伸びてきており、ばらつきはあるものの30~35年もつこともあります。