「子供には野球はあんまりやらせたくない」中田翔がはじめて明かした「子育て論」と「オヤジの本音」
「本心はね、野球はあんまりやらしたくない」
中田が「野球を好きになることが一番」と話すのには理由がある。 「他のプロスポーツも同じだと思うけど、野球に関していえばプロ野球選手は相当しんどい職業ですから。一年間戦い抜くってこともそうだし、プレッシャーももちろんある。 いつかそういうプロ野球界の厳しい側面も伝えていかなきゃいけない。でも、真剣にやると我が子が言うなら、俺も真剣に付き合っていきたいと思っています」 「野球をやりたい」「パパみたいになりたい」という子供が、このまますくすく育ち、もし「プロ野球選手になりたい」というようになったらどうするのだろうか。 「もちろん全面的にサポートするよ。俺が教えられる引き出しは全部教えてあげたい。我が子なんで当たり前の話なんですけどね。 まだ5歳なんで、まだまだ10年先とかの話だろうけど、今は本当に野球を好きになってほしいなって思います」 父の顔になって話していた中田だが、少し黙った後、こう話した。 「本心はね、野球はあんまりやらせたくないかな。自分がつらい経験もたくさんしているから、愛する我が子にそんなつらい思いをさせたくないなって。 他のスポーツもそうかもしれないけど、野球選手は本当に一年間詰め詰めで家族にもあまり会えない。子供の運動会にも、授業参観にも行けない。子供の行事には、ほとんど俺らは参加できないんですよ。 子供にとっての夏休みは俺らにとってシーズン真っ只中で、夏休みこそ働き時。球場に野球が好きな子供たちがたくさん見にきてくれるから。 一方で、自分の家族には寂しい思いをさせてしまっているなと思う。子供の友達は家族で旅行に出かけたりする中、俺はそれをさせてあげられないから、すごく申し訳ないなぁという気持ちがあるんです。 だから、根本的には俺と同じ野球の道を進むのは、“本当にしんどいぞ!”って伝えてあげたい。 ……それでも本人がやると言ったら俺はとことん全力で応援しますよ」 これまで数々のプレッシャーに耐え、たくさんの声援を受けた一方で多くの罵声も浴びてきた中田翔。若手時代には不祥事を起こしたことも素行の悪さで目立ってしまったこともある。その度に野球へ情熱を向け、バットに気持ちを乗せてきた。 そんな中田が、プロ野球選手として16年目のシーズンを終えた。 インタビューの終わり間際に「(取材で)こんなに話したの初めてだよ(笑)」と照れながら部屋を後にする中田の背中にベテランの風格と親父の威厳を感じた。 中田翔●1989年4月22日。広島県広島市中区出身のプロ野球選手。右投右打。2008年に日本ハムファイターズに入団、2021年に読売ジャイアンツへ無償トレード移籍。2023年12月に中日ドラゴンズと正式契約し、入団会見を行った。 取材・文/佐々木一城
集英社オンライン編集部特集班