「83歳の父は認知症… 介護者の51%は心身の健康に影響が出ている」英司会者が介護をする家族の苦悩を語る
イギリスで今、一番の死因になっているといわれている「認知症」。多くの人が老化の一部だと思い込んでいるこの病が、実は今、イギリスで最も多くの命を奪っている。そして何百万人もの人々が、日々この病と戦い続けているのだ。 【動画】83歳の認知症を患う父親の介護をする英テレビ司会者。自身が制作した介護ドキュメンタリーの予告編 ここからはイギリスの司会者 アンナ・リチャードソンが自身の経験から、認知症が家族にどのような影響を与えるのかを率直に綴った。 ※この記事はイギリス版ウィメンズヘルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。
多くの家族が直面している認知症の現実
認知症患者は、イギリスで約100万人おり、私の父、ジム(83歳)もその一人だ。 父は、脳への血流の減少によって引き起こされる脳血管性認知症を患っている。これはアルツハイマー病に次いで2番目に多いタイプの認知症である。2018年に診断を受けて以来、父は一連の一過性脳虚血発作(ミニストローク)に何度も見舞われ、認知機能と身体機能の衰えが加速した。 40年前に離婚した母は、81歳になった今もできる限り父の面倒を見ようとし、掃除や買い物を手伝ってはいるものの、身体的なサポートまでは当然ながらできない。 私も兄弟も、母と父をサポートするために最善を尽くしているもの、全員がフルタイムで働いており、私はロンドンから数時間離れた場所に住んでいるため、常にそばにいることはできない。そこで生まれるのが、罪悪感とフラストレーション。欠陥だらけの社会保障制度の隙間を埋めるために、家族全員が尽力しているけれど、できることには限界がある。認知症の影響は、本人だけでなく、家族全体に計り知れないほどの影響を与えているのだ。
認知症は現代における最大の社会課題の一つ
先ほども言ったように、認知症はイギリスで最も多くの命を奪っている病気である。がんや心臓病ではない。認知症なのだ。それなのに、なぜ他の病気のように、緊急性のある問題として優先されないのだろう。 イギリスでは、3人に1人が認知症の影響を受けている。イギリスの認知症支援団体であるアルツハイマー病協会は、2040年までに認知症患者の数が140万人に達すると予測している。また、認知症患者の約3分の2が女性であることも推計されている。 これは私たちの時代における健康と社会福祉の最大の課題ではないだろうか。認知症の影響を受けている多くの人々が語るように、サポートの負担は家族にのしかかり、その影響は仕事や対人関係、さらにはメンタルヘルスに壊滅的な打撃を与えている。認知症は、私たち全員に関わる問題なのだ。