中国不動産の惨状「すでにデフレに突入」「深刻な社会不安を引き起こす恐れも…」中国経済“クラッシュ”なら日本のバブル崩壊を凌駕する破壊力
中国不動産バブル #3
中国不動産バブルの崩壊は始まっているのか、いないのか。専門家によって見方が分かれるが、確実に一時期の勢いは失われ、多くの企業が政府による救済を待っている状況だという。 【写真】警察に拘束された恒大集団の創業者・許家印氏 日本とは違い、政府が市場に直接介入することができる共産主義の中国で起きている状況を、書籍『中国不動産バブル』より一部抜粋・再構成し、解説する。
日本のバブル崩壊よりも深刻な影響が……
2023年9月、中国のSNSである情報が流れて大騒ぎになった。中国国家統計局副局長だった賀鏗が中国国内で開かれたフォーラムで、中国の不動産市場は供給過剰の問題が深刻で、今売りに出されている住宅は14億人が入居しても余るぐらいだ、と述べたとのことだった。 中国の不動産市場は明らかに供給過剰になっているが、賀の言い方は明らかに事実に反している。部屋の広さは別として、単純計算すれば、1戸あたりに住んでいる中国の標準家族は3~4人である。今現在、3億ないし4億戸のマンションまたはアパートが売りに出されているとは思えない。 このような荒唐無稽な数字をもとに、中国不動産バブルが崩壊したと指摘するのは、根拠不足といわざるを得ない。 不動産バブルが崩壊したかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれている。中国の不動産バブルがすでに崩壊したと指摘する専門家は、不動産デベロッパーのデフォルトを理由に中国経済が日本化(Japanification)する、すなわち、日本と同じように失われた20年か30年を喫するのではないかとみているようだ。 それに対して、中国の不動産バブルは崩壊していないとみている専門家は、中国の景気減速は一時的なもので、デベロッパーがデフォルトを起こしているが、不動産バブルの崩壊を意味するものではないと指摘している。 では、どちらの見方のほうがより真実に近いのか。 私の考えを大胆にいえば、中国が民主主義の市場経済だという前提に立てば、すなわち、政府が直接市場に介入できないということを前提として考えれば、中国は30余年前の日本と同じように不動産バブルが崩壊し、デフレに突入している段階だと断言できる。 中国の不動産バブルはすでに崩壊している。事業を多角化させていたデベロッパーはもちろんのこと、本業に絞って不動産開発に専念していた「健全」なデベロッパーも、経営難に直面するようになった。 ただし、中国の不動産バブルの崩壊の仕方は、30余年前の日本が経験したバブル崩壊とは異なるものになる。 日本のバブル崩壊は金融システムに飛び火し、都市銀行を含む大手金融機関までが倒産したが、それ以上はバブル崩壊の影響が広がらなかった。とくに重要なのは、日本は30年を失ったといわれているが、技術は失わなかったことだ。 それに対して、中国のバブル崩壊は国有銀行に飛び火するだけでなく、地方財政にも飛び火し、深刻な社会不安を引き起こす恐れがある。それはサプライチェーンの再編と重なり、外国企業が工場をほかの途上国に一斉に移転すれば、中国は技術も失う可能性がある。