中国不動産の惨状「すでにデフレに突入」「深刻な社会不安を引き起こす恐れも…」中国経済“クラッシュ”なら日本のバブル崩壊を凌駕する破壊力
幹部を接待するための「喜び組」
中国の不動産価格がバブルと化した流れを振り返ろう。都市開発のために、デベロッパーは地方政府から地上げされた土地を落札して、それを担保に銀行から融資を受ける。 そのプロセスで地方政府の幹部および銀行の幹部に多額の賄賂を贈るというのは、中国では広く行われている周知の事実である。そこに不動産建設の材料費や人件費の上昇も上乗せされていく。経済が順調に成長している段階では不動産開発も順調に進み、デベロッパーの売り上げも順調に拡大していた。 このようななか、多くのデベロッパーは経営の多角化を図っていった。不動産業は景気にもっとも連動する産業である。景気のよい局面において不動産業は景気の牽引役となる。景気が減速すれば、不動産業は一気にしぼんでしまう。 きわめてわかりやすい構図だが、中国のデベロッパーは自国の不動産需要において「剛需」が長く続くとみていた。 だから強気の開発計画を展開するだけではなく、まったく無関係の副業にも幅広く手を出した。経営の多角化を成功させるには本業と副業の補完関係が必要不可欠だが、多くのデベロッパーはそうしなかった。 2021年にデフォルトに陥った恒大集団を例にとってみると、本業の不動産開発のほかに、電気自動車の開発、プロサッカーチームの買収、テーマパークの建設と運営、ミネラルウォーターの製造販売などを手広く手掛けてきた。 2023年に創業者の許家印が警察に拘束されたあと、彼に纏わるさまざまな悪事が明るみに出た。その1つが、土地の入札のために共産党幹部を接待する専用「会所」(プライベートクラブ)を作り、歌舞団を設立したというものだ。歌舞団をわかりやすくいえば、北朝鮮指導者の「喜び組」のような組織である。
理不尽なバブル
もう一例をあげよう。 中国の不動産デベロッパーと共産党幹部の癒着を暴露するノンフィクション『私が陥った中国バブルの罠レッド・ルーレット中国の富・権力・腐敗・報復の内幕』(デズモンド・シャム著、神月謙一訳、草思社、2022年)のなかで、不動産開発に携わっていたシャム夫婦(当時)が、共産党幹部の関係者および2人の実業家の3組の夫婦を接待するため、4機のプライベートジェットを飛ばしてヨーロッパへ旅行に出かけたというエピソードが出てくる。 出発間際になって、みんなで一緒にトランプで遊ぼうという話になり、4組の夫婦8人は同じ飛行機に乗り込んだ。あとの3機は乗務員以外、誰も乗っていなかったが、後をついていった。 彼らはパリに着いて、シャンゼリゼ大通り近くのミシュラン星付きのレストランで食事をするが、ワインだけで10万ドル(当時のレートで約850万円)を超えたと本のなかで記されている。 これらのお金はすべて不動産開発と不動産投資から得られた利益のはずである。 不動産バリューチェーンのなかで、これらの勝ち組の贅沢三昧の生活を支えているのは結局のところ、マンションなどの不動産を高価格で購入している無数の個人である。 この2つの事例からは、中国の不動産市場が明らかにバブルとなっており、持続不可能な状態となっていたことが明らかだ。このような理不尽なバブルがはじけないはずがない。