7年ぶり1部の近大ボクシング部 廃部時に学生だった監督の思い
7年ぶり1部の近大ボクシング部 廃部時学生だった監督の思い THE PAGE大阪
部員の不祥事による廃部を乗り越え「近畿大学ボクシング部」(大阪府東大阪市)が1部のリングに帰ってきた。来季7年ぶりの1部昇格が決まり、まさにどん底から復活した形だ。長く待ち望んでいた悲願成就に、拳に魂を宿す男たちは人目をはばからず男泣きしたという。そんな新生「近大ボクシング部」を訪ね話を聞くと、浅井大貴監督(26)は「いろんな大切さを学んだ。復活はうれしい気持ちでいっぱいです。来季は1部で優勝を目指します」と熱い胸の内を明かした。 <私の恩人>CMで話題の赤井英和、ボクサー時代の忘れらない恩師
浅井監督・廃部となった時は2年在学中だった
「近畿大学クラブセンター」に足を運ぶと、午前10時からすでにグラウンドで走り込みの練習が始まっていた。部員たちは汗まみれで、走り込みのあと、ジムでのトレーニングと、毎日4時間の練習を続けているという。 近大ボクシング部は1943年創部。メキシコ五輪銅メダリストや世界チャンピオンらを輩出し、リーグ36連覇(関西学生リーグ)、全日本大学王座を10度獲得するなど関西の大学ボクシング界の雄として君臨した。 しかし2009年6月、部員2人が大阪市内で通行中の男性を殴って現金を奪う強盗傷害事件を起こし、これで即時廃部が決まった。12年10月に活動再開となったが、これには栄光復活を望む人たちのひたむきな努力があった。日本ボクシング連盟終身名誉会長の山根明さんの働きかけや4万人以上の署名を集めたOB会、さらには近隣商店街の清掃活動に取り組んだ部員らの熱意が実を結んだのだ。 チーム再建を託されたのはOBでタレントの赤井英和総監督だった。新監督として部員を率いたのがOBの浅井大貴監督。廃部となった時は2年生在学中で、事件を起こした部員とは同級生だったという。
廃部を通して思ったのは「いろんな大切さ」
6月28日にボクシング関西学生リーグ1・2部入れ替え戦が関西大千里山キャンパス(大阪府吹田市)内のボクシング場で行われた。2部優勝校の近大は関学大との入れ替え戦(1チーム9人で階級別に対戦)を6-3で制し、7年ぶりの1部復帰を果たした。1部昇格を決めた瞬間、赤井総監督らは号泣したという。 新生ボクシング部は3部から再スタートを切り、今季は2部で優勝。現在、女性3人を含めて部員は30名。名門復活に向けての足場固めが功を奏したと言える。 「廃部を通して思ったことは、いろんな大切なことがあるということ。食事の大切さ、水1つでも大切です。応援して下さる方々の大切さ、もちろんそれがいちばん大きかった。感謝の気持ちでいっぱいです」と、浅井監督。 もともとボクシングが好きで浪速高校に入ってボクシングを始め、スポーツ推薦で近畿大学へ。「高1から始めたボクシングは、試合を見ててかっこよかったし、自分にできそうかなって。団体競技が苦手なので。強くなりたいってのもありました。近大ボクシング部では同期とも仲良かったし、楽しくやってた。高校の時は先輩がいなかったので、すごく充実してたんです」 しかし、大学2年の時、突然の不祥事。廃部は当然の結果だった。 「知らない間に起こったことで、ほんまに悲しかった。なんでって? 同級生だったし、つらかった…。廃部になってからは寮の屋上で、みんなで一緒に練習してた。プロのジムからもお誘いを受けて、大阪の上本町にあるジムに通ってました」 教員免許を取って、卒業後は母校の浪速高校の非常勤講師(国語)となったが、ボクシングへの情熱は忘れなかった。「卒業後、社会人1年目の時に監督の話があった。信じられなかった。なんで僕なんやって。どうしていいかわからなかった。でも、自分がやらないと復活できないと思った。重大なことを引き受けたと思ったけど…」