経済対策の真水は13.5兆円規模か:住民税非課税世帯への給付とエネルギー補助金のGDP押し上げ効果は0.07%程度と推定
半導体・AIの公的支援策は9,000億円程度と想定
政府は2030年度までに半導体・AI分野へ10兆円以上の公的支援策を実施するとしている。2024年度から2030年度までの7年間で10兆円の支出を行うとすると、1年あたりで1.4兆円となる。それは、2025年度予算から毎年計上されると考えられるが、2024年度補正予算、つまり今回の経済対策にも1年分計上されると仮定しよう。 その内訳について、次世代半導体の研究開発補助金などに6兆円程度、政府による出資や債務保証などの金融支援に4兆円以上が充てられる、とされる。後者は主にラピダスの支援と考えられるが、ラピダスの先端半導体の量産化に5兆円の銀行融資が必要であり、その多くの部分に政府が融資保証を付けることが予想される。それは、一般会計には入ってこない。また、直接景気浮揚効果を生むものではない。 経済対策を賄う今回の補正予算に計上される半導体・AI分野への公的支援策は、年平均の1,4兆円程度のうち半分の7,000億円と想定しよう。そのうち、投資的な支出が3,000億円程度、補助金などが4,000億円程度と考える。投資的な支出の場合、8割程度はGDPの押し上げに直接貢献し、さらにその乗数効果も生じると考える。他方、補助金の場合には、企業の設備投資押し上げ効果は4分の1程度にとどまると考える。
経済対策の経済効果の現時点での荒い想定
以上3つの項目の合計は、2兆2,400億円程度となる。また、その経済効果はGDPを1年間で0.13%程度押し上げられると概算される。 それ以外に経済対策に盛り込まれる可能性が高いのが、例年盛り込まれる国土強靭化計画だ。それは投資的な支出の割合が大きいため、景気浮揚効果も高めとなる。また、能登半島の豪雨災害への対策も盛り込まれるだろう。国土強靭化計画と災害関連の支出は、昨年の経済対策では6.1兆円盛り込まれたが、今回はそれを上回る7.5兆円と想定した。 それ以外の支出を含め、経済対策のうち補正予算で賄われる真水部分は、報道されているように13.5兆円と想定した。その場合、GDPの押し上げ効果は現時点での概算で1%弱である。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英