復興は「地方創生への橋渡し」 経験・ノウハウ残すことも“使命” 復興庁・末宗事務次官
Q:課題が残る中で、これから何年後までにどうする、というイメージはありますか?
復興庁の役割を当面10年延ばします。「当面10年」だから10年じゃ終わらないということなんですが、まず次の10年で大事なのは人の居住を制限する帰還困難区域での取り組みを進めていくことです。具体的には、現在福島県内6町村(双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村)において各町村の中心部だった場所は先行して除染し、インフラも整備しているところです。
もともと福島県沿岸部の「浜通り地域」は原子力産業が中心でしたが、今は福島県が脱原発の方針です。福島第1原発の廃炉に30~40年かかりますが、それとセットで「福島イノベーション・コースト構想」といって、廃炉やロボット産業、風力・水素などのエネルギー産業、ドローンやAIを使った最先端の農業など新しい産業を興す。このような前向きな構想も進めています。 私は復興庁の前は内閣官房で地方創生を担当する部署にいましたが、やっぱり魅力ある仕事ができれば若い人材は来るわけです。阪神・淡路大震災(1995年)があったとき、あそこは神戸港を中心とした物流や鉄鋼、造船などが産業の中心でしたが、震災によって物流のハブが弱まっていったのです。その後、神戸は医療産業都市に生まれ変わって、こうした産業が今では雇用を生み出していますが、25年かかっています。 浜通り地域も、これからは新しい産業に魅力を感じて若者が来る地域になることを目指しています。
Q:復興のゴールはどのような形でしょうか?
地震・津波被災地域の方はインフラ整備の後に心のケアなどの被災者支援や産業・なりわいの再生を中心にさらに5年間集中して取り組む。で、その先としてコミュニティを再生し、街に賑わいを取り戻し、地域が自立していく、ある意味、「地方創生」という通常の世界を目指していく。そこまで円滑に進めて、復興というのが終わっていくと考えています。原子力災害被災地域は、そこに人が住めるように生活環境などを整備するとともに廃炉まで終わらせなければなりません。