【全日本大学駅伝】「桑田、クヨクヨしてる場合じゃないよ」5連覇狙った駒澤大学、3区16位スタートから猛追の2位
3大駅伝初出走の3人がしのぎ、篠原倖太朗へ
ここから、ただでは終わらない王者の底力が発揮された。 3区の伊藤蒼唯(3年、出雲工業)が区間2位の快走を見せ、一気にシード権内の8位まで持ってきて4区へ。以降の3区間は、いずれも3大駅伝初出走の谷中晴(1年、帝京安積)、村上響(2年、世羅)、昨シーズンまでチームに多大なる貢献を果たした安原太陽(現・Kao)の弟・安原海晴(2年、滋賀学園)の3人に託された。藤田監督が「しのがなきゃいけない」と考えていた3区間で、谷中が区間3位、村上が区間5位、安原が区間3位。トップの青山学院大学とは2分47秒差の5番手で、7区の篠原が第6中継所をスタートした。 エースが集った7区、ライバルの青山学院大は第100回箱根駅伝総合優勝の立役者、太田蒼生(4年、大牟田)。國學院大は4大会連続で平林を投入してきた。2人が先頭争いをする中、篠原はスタート直後に城西大学の前に出てからは終始、単独走。それでも同タイムで走りきった太田と平林を10秒上回り、3位に上げてアンカーの山川に襷(たすき)をつないだ。10月の出雲駅伝では平林とのアンカー勝負に敗れた篠原。このときは悔し涙を流していたが、全日本のレース後は「平林とは1勝1敗なので、箱根でどっちが強いのか(を決めたい)。太田君は箱根になったら本当に強いので、しっかり頭に入れながらやっていけたら」と勝負師の表情を崩さなかった。
山川拓馬「うれしさ半分、悔しさ半分」
山川は時計をつけず、「とにかく突っ込んで、そのまま一定のペースで刻んで、ラスト上げる」というレースプランを大八木総監督、藤田監督と話し合った上で、2分37秒差がついたトップを追いかけ始めた。5kmあたりで先頭付近の中継車が見えたことで「もう行くしかない」と決意。15km過ぎぐらいになると、2番手を走る青山学院大・塩出翔太(3年、世羅)の背中が見え始めた。「塩出は絶対に抜いてやろうと思いました。その前には(國學院大の)上原(琉翔、3年、北山)もいるので、そこも抜きたいなと」 18km過ぎで塩出を抜き去り、上原の姿も視界にとらえた。優勝した國學院大との差を2分以上も縮めたものの、わずかに及ばず2位。悔しそうな表情を浮かべながら、フィニッシュテープを切った。「うれしさ半分、悔しさ半分という感じで、3番でもらって2番でゴールできたのは良かったんですけど、背中が見える状態での2番だったので、力が足りないなと思いましたし、詰めの甘さもありました。歴代の強い先輩方だったら、こういうのは絶対に勝ってきたんだろうなと」。渡辺康幸さんが持つタイムも視野に入れていたという。「56分台を今回出せなかったので悔しいんですけど、それに近づくタイム(57分09秒)は出したので、もう少し……」 本人は充実感と悔しさが入り交じったような感情だったが、藤田監督は手放しで褒めたたえた。「山川、すごいなあと思いました。今年は力がちょっと違うなと思います。57分台は当たり前に出して、渡辺さんの記録も本人は意識していました。抜けなかったですが、そこに意識が向いているということは、駒澤のエースになるという自覚を持っているんだと思います」