「ああ、ロミオ」短いセリフに詰まった深い意味、有名なセリフには有名になる理由がある
そして、アントニーは「もし私がブルータスで、ブルータスがアントニーだったら」と仮定を使って続けます。 私がブルータスで、ブルータスがアントニーだったなら、 アントニーは諸君の心に怒りの火をつけ、シーザーの 傷という傷に舌を与えてしゃべらせ、その結果ローマの石すら 決起して暴動を起こすだろう。 (同書、第三幕第二場) 仮定法の中で、自分の意見はあくまで公的な立場(役割)としての意見だと冷静に伝えることで、相手の心に火を植え付けます。個人的な感情で言っているのではない、だから安心して行動してほしいと。
市民たちは何と言うか。 「よし、暴動だ」。もう単純です。 ちょっと笑ってしまうのですが、「ブルータスの家に火を放とう。行こう。さあ、一味を探し出せ」と憎しみ一色になるんです。 ここで面白いのが、アントニーは「行け!」と命ずるのではなく、「待て、聞いてくれ。まだ話すことがある」と引き留めるんです。民衆の暴動を正当化するストーリーは作れたが、まだ内面の準備が足りないと思ったのでしょう。 アントニーは最後に何を伝えたか。
実は、亡くなったシーザーは、市民たち1人ひとりに75ドラクマ(古代ギリシャの通貨単位)という、高額なお金を分け与えるつもりだったと言うのです。シーザーは、市民1人ひとりにお金を用意していた、そこまで市民たちのことを想って尽くそうとしていた……。 民衆の心が1つになります。もう市民たちは完全にアントニーの思い通りに行動します。一度動き出した群衆を止めることは誰にもできません。さて、ローマはどうなるのか?
これは実際の戯曲で読むとめちゃくちゃアガる場面なので、ぜひ読んでほしいところです。シェイクスピアは用意周到で、こんな風に、ストーリーで相手を動かすこともします。特に相手を行動させる時ほどそうします。そうでないと人は動かないとわかっていたんですね。 ■「ああ、ロミオ」にぜんぶつまっている ここで、みなさんご存じの言葉もご紹介しましょう。『ロミオとジュリエット』です。中でも一番有名なセリフ、何が思い浮かびますか? 絶対聞いたことあるはずです。そうです、それです。