「令和の米騒動」「晒し投げの衝撃」中日人気復活の一方で、球団ワースト3年連続最下位…今こそ立浪ドラゴンズを振り返る
晒し投げの衝撃
長谷川:2023年8月25日のDeNA戦で、プロ3年目の近藤廉投手が晒し投げさせられたことがあったじゃないですか。9回に登板して、1イニングで打者16人に8安打5四死球となり10失点。あれは見ていてかわいそうだった。あの状態なら普通はピッチングコーチが絶対止めるはずなのに、できないわけでしょ? 彼の肩の浪費にもつながるし、衆人環視のもとで恥をかかせるのはメンタル面も心配です。 村瀬:あれは苦しい場面でしたね。他球団の投手も苦言を呈する人がいました。 長谷川:Z世代がどうとかは関係なく、マネジメントをする人としてやっちゃいけないことだと思うんです。
“まるで神様”…強すぎた存在感
村瀬:監督の重要な資質のひとつが“伝達力”だと思うんです。どれだけ素晴らしい意図があっても選手に伝わらないといけない。厳しい指導をして、その意図がちゃんと本人に伝わっていなかったら「これに何の意味があるんだろう、監督に嫌われているだけじゃないのか」と受け取られてしまう。そういうことが続くと人がついていかなくなりますよね。 今は一般社会と同じことが言われていますが、選手も念入りに説明してあげないといけないと聞きます。ぶん殴られても、突き放されても、そこから悔しさと愛情を感じ取り、成長の糧にしていた、星野仙一監督の時代の選手とは明らかに違います。それに星野監督はムチだけでなくアメの使い方も抜群に上手かったと聞きますからね。 立浪さんは本当に厳しい野球で育ってきた方。さらに高校時代から先輩に怒られたことがないと言われていたくらいのスーパースターです。だからこそ、選手やコーチとの緩衝役にもなれて、高校時代からの盟友である片岡篤史ヘッドコーチを近くに置いたんだろうけど、他にどれだけ心を許せる人がいたんだろうと切なくなりますね。 長谷川:立浪さんの存在感がやっぱり強すぎました。ミスタードラゴンズとして周りがあまりにも崇めすぎた気がする。 村瀬:そりゃあ高卒ドライチのルーキーからずっとレギュラーを張ってきて、ドラゴンズひと筋22年で2480安打。もう神様みたいな存在ですよ。そんな人がずっと待望されながらも、なかなか監督にお呼びがかからなかった。結局12年もの間、現場に呼ばれなかったわけで、そこからいきなり入って、今の若い選手たちとも上手くやってくださいといわれたって、難しいですよね。 長谷川:12年空くと、今の選手はもう立浪さんの現役時代を知らないですよね。最近は二軍監督を経て一軍監督に就任する人が多いですけど、やっぱりそこを踏んでないと難しいのかなという気がします。巨人の阿部慎之助監督も近い立場だったと思うんですけど、二軍監督を経験しているおかげか、選手との距離が近いですよね。今の若者の気質もちゃんと掴んでいる感じがする。 村瀬:だからこそ神様は神様のままでいさせてあげたかった気もします。立浪さんの退任報道が出たときも、周りが腫れ物にさわるような感じがあったじゃないですか。これだけチームが弱いのに、球界の人たちがみんな気を遣って奥歯にものがはさまったような言い方しかできない。そういう雰囲気が、そのまま現場にもあった感じがしますね。