新米と栗の相性が最高。高橋久美子さんの幸せな「栗ご飯」のひととき
味覚の秋。新米や栗などおいしいものが増えてきます。東京と愛媛で二拠点生活をしている作家・作詞家の高橋久美子さんは、農家という一面ももっています。そんな高橋さんが今年出合った秋の味覚について、つづってくれました。 【写真】猿から死守した栗
新米ありがとう!
新米の季節がやってきた。スーパーにも新米が積まれ始める。こんな逆境の中でよくぞ実ってくれましたという気持ちになる。外食でお米をいただくとき、農家のみなさんへの感謝の思いをこれまで以上に感じるようになった。 それは、私も農業を始めたことが大きいだろう。 夏の野菜や米づくりは本当に過酷だ。がんばっても暑すぎてまともに育たず、報われないことも多い。だからこそ、この実りに感謝したい。
貴重な栗が手に入った。新米で栗ご飯をつくろう
そろそろ栗ご飯したいなあ。 でもうちの方は猿が出るので、栗も柿も全部食べられてしまう。ネットをかけたって、ネットの上から噛みついて食べる食い意地よ。そんなわけで栗は諦めていたところ、関東の友人が「猿から死守した!」と、貴重な栗を分けてくれた。うわー。まるまるとした栗。ありがとう。そうか、関東でも猿が出始めているのだね。どこも大変だよね。 栗は冷蔵庫で寝かすとおいしいそうだけれど、待てませんよねえ。 せっせと皮をむいて米と一緒に土鍋に入れ、昆布を二かけ、塩をひとつまみ、あとは火をつけて炊くだけだ。 ずっと座って書いている時間が多いので、無心に栗の皮をむいたりコンロの火を眺めるのが好きだ。私の料理にあまり裏技はない。時短もない。 暑い夏に火をつけて家事をするのは億劫だったけれど、今は涼しいってだけで幸せやなあと思う。 ぶくぶくぶく。土鍋が暴れ出したら、急いで火を弱めてタイマーを10分。 待つ間にお茶を沸かし、それから、おかずは冷蔵庫に残っていたナスとタマネギをフライパンで蒸し焼きにする。お腹がすきすぎて、それを先に食べてしまった。 ピピピピとタイマーがなって、そこから5分蒸らすんだけど、待ちきれなくてすぐにお茶碗に盛りつける。写真を撮ろうにも湯気でかすんでしまう、それもまたよいのよなあ。 夫は出張。ひとりで噛みしめる栗ご飯の美味であることよ。塩加減もよきかな、昆布もぱくりと食べてまえ。幸せだなあ。
手をかけずとも米はうまい
こんなおいしい栗ご飯を口にしたとき、あと何回、ご飯を食べられるんだろうと考える。私の生きる理由の上位にご飯が入っている。できるなら、おいしいものを緊張しない場所で食べたい。 かと思えば、今日は料理は無理だという日もある。とりあえず米を炊き、おにぎりをいっぱい握って、それを一日食べて終わる。手をかけずとも米はうまいのだ。とくに土鍋で炊いたご飯は、おかずなどいらん。冷めたっておいしい。 また2階の書斎へ戻る。録画しておいた朝ドラを見なきゃな。 そうか、新しい朝ドラは『おむすび』っていうのか。『虎に翼』ロスで秋を感じていたけど、おいしい朝が始まるといいな。
高橋久美子