全仏で見えた光と影。錦織圭はグランドスラムで勝てないのか?
第2セット以降の変化の理由を、試合後の錦織は「焦りだした」と説明する。 「戦術的なところで、するべきプレーをしなくなっていた。加えて彼の球も深くなり、自分の浅いボールを叩かれ始めたので焦りが出てきた」というのが、戦いながら彼が感じていた事だという。 「焦り」は今回に限らず、錦織がトップ選手相手に惜敗を喫した時、しばしば口にする言葉だ。 以前に錦織は「焦ると具体的にどのようなプレーになるのか?」との問いに対し、「一番大きいのは誤ったショット選択。競っている時やプレッシャーを掛けられている時は、どうしても無理して決めに行きがちになる」と答えていた。 また「良いポイントの形を作り、焦りを無くしていくことが課題」だとも続けている。そのような精神面の焦りをなくすためにも、最近は特に「試合を振り返り、どういう気持ちだったか、どういう持ち方でやればよかったかというのをコーチと話し合うことを良くやっている」と言った。 焦りを消すもう一つの要因となり得るのは、体力的な自信だろう。スタミナ切れを感じたら、早く決めにいきたくなる。体調面に心が向けば、試合への集中も当然難しくなるだろう。 その点に関しては、マレー戦後の錦織は、心強い言葉を残している。 「今日は、身体は意外と戻ってました。2日前のベルダスコ戦が一番きつかったし痛いところもあったのですが、今日はだいぶ良くなっていた。この2週間の中で、戦いながら回復することもできたので、身体が強くなっている証拠だと思う。(決勝まで行けば)まだ2試合あるけれど、たぶん出来ていると思います」。 課題を自覚し、それらを克服しつつある手応えは感じている。ただそれらがかみ合わないのが、本人も今もどかしいところなのだろう。 「トップ4の選手たちは、明らかにしていることが他の選手と違う。そこに入っていくためにも、もう少し磨きたいところがたくさんある」と認めた上で、彼は言った。 「今は我慢すべきタイミングだったり、時間でもあるのだと思う。ひたむきに練習なり試合をやっていくしかない。周りもしっかりサポートしてくれるので、自信を持ってやっていきたいです」。 (文責・内田暁/スポーツライター)