「受け身じゃ世界は無理なんや」“モデルジャンパー”から国内3年間無敗の女王に…走幅跳・秦澄美鈴(28歳)が目指す「世界へのリベンジ」
大粒の雨が降りしきる中で迎えた、陸上・日本選手権の最終日。トラック最終種目の男子100m決勝を終え、最後の種目となった女子走幅跳は秦澄美鈴(住友電工)が6m56cm(+1.4)を跳び、4連覇を遂げた。 【写真】「えっ、何頭身なの…?腹筋もヤバすぎ…」“モデルジャンパー”秦澄美鈴(28歳)169cmの長~い手足とバキバキの腹筋。試合での大迫力の跳躍シーンも…この記事の写真を見る(50枚超) 新潟の地で行われた4日間の日本選手権は、すでにパリ五輪の参加標準記録(6m86cm)を突破している秦の五輪内定とともに、熱狂のうちに幕を閉じた。 パリ行きの航空チケットを模したボードを手渡され、場内インタビューでは晴れやかな笑顔を浮かべていた秦。だが、表彰式などを終えて取材エリアに現れた彼女は、至って淡々としていた。 「東京五輪は出られなくて、ちょっと悔しい思いをしたので、出場が決まったのはうれしいのですが、まだ結果を残せたわけではないので『よっしゃ』とは思い切れないのが正直な気持ちです」 五輪内定は決めたものの、跳躍自体には「手応えを感じていない」という。
圧勝でも「及第点はあげられない」…厳しい自己評価
今季の秦は、4月の兵庫リレーカーニバルで優勝し、屋外シーズンをスタート。木南記念では今季国内最高の6m72cm(+0.1)をマークして優勝した。ただ、試合後から調子が崩れていたといい、「試合をこなしながらできる範囲で練習を積んできて、ここまでの1カ月くらいでしっかり練習ができるようになった」と明かす。 今回はパリ五輪の決勝進出を見据えて「前半試技で6m70cm台後半を跳ぶ」ことをテーマに臨んだ。だが、悪天候の影響もあり、助走が思うように走れず前半3回の跳躍は6m17cm、6m37cm、6m41cmとなかなか好記録につながらなかった。 最終跳躍で6m56cmを跳んだが「及第点はあげられない」と評価は厳しめ。助走スピードを上げ切ることに課題を残した一方で、それが上手く噛み合えば、記録に結びつくという感触も得ているようだ。 「今までなら一本記録が出せても安定感に欠けていたり、風に左右されたりしていましたが、今の助走のリズムならスピードさえちゃんと出せれば安定すると思うので、オリンピックにむけて調整を進めていきます」 秦は、2021年2月の試合から国内では3年半近くにわたり「無敗」を誇るトップジャンパーだが、走幅跳に専念したのは社会人1年目。高校から大学までは走高跳を専門としていた。 大学を卒業した2019年から、男子走幅跳元日本記録保持者の森長正樹氏、女子三段跳日本記録保持者の森本麻里子らの恩師である坂井裕司氏に師事。助走や踏み切りの技術を一から学び直し、その年の日本選手権で初優勝を果たす。 東京五輪シーズンの2021年4月には、日本歴代4位タイ(当時)の6m65cm(+1.1)をマークし、その年の日本選手権を含め、出場全試合を制した。ただ、それでも五輪に届かなかった経験が、世界を目指す上での視座を変えるきっかけにもなっている。 東京大会から五輪初の「ワールドランキング制」――各大会のグレードやタイム、順位などをポイント換算して算出するランキング上位に入れば、出場資格を得られる仕組みが導入された。参加標準記録を突破できなくても、複数の大会でコンスタントに記録や結果を残せば、五輪への扉が開かれるというものだ。 シーズンイン前の自己記録6m45cmに対し、参加標準記録は6m82cm。秦はこのランキングによる代表入りを見据えていたが、ターゲットナンバー(出場枠)の32位の選手と約30ポイント差の37位で出場権を得ることはできなかったのだ。
【関連記事】
- 【写真】「えっ、何頭身なの…?腹筋もヤバすぎ…」“モデルジャンパー”秦澄美鈴(28歳)169cmの長~い手足とバキバキの腹筋。試合での大迫力の跳躍シーンも…この記事の写真を見る(50枚超)
- 【こちらも読む】“モデルジャンパー”と注目されて…走幅跳・秦澄美鈴26歳の本音と“アスリートのメイク”への思い「自分の好きな見た目でいるのが健康かな」
- 【あわせて読む】173cmの長身でも「“モデル体型”じゃダメなんです」…「悔しい」日本選手権3連覇で走高跳・高橋渚(24歳)が見せた“成長と課題”
- 【レポート】田中希実「圧勝劇」の裏側で…次世代エース候補たちの明暗 ドルーリー朱瑛里(16歳)と澤田結弥(18歳)2人の“10代ランナー”が向かう先
- 【注目】“久保建英のいとこ”から“陸上界のニューヒロイン”に…16歳で800m日本チャンピオンの久保凛 日本選手権で見せた「ホントのすごさ」とは?