「札幌ドーム」と「日ハム新球場」の残酷な明暗 ネーミングライツの応募もなく苦戦が続く
他球団の場合、球団が球場内の広告看板をスポンサーに販売したり、球団プロデュースの飲食店、物販店を球場内に出店して収入を上げるなど球場を「コンテンツ」として最大限に活用することができたのだが、ファイターズの場合、毎試合球場使用料を支払ったうえに、広告看板や場内の飲食物販の収入もドーム側に握られていた。ファイターズという存在がなければ、こうした収益はありえなかったのだが。 ファイターズは21世紀に入ってから、ダルビッシュ有、大谷翔平をはじめとするスター選手を輩出したが、活躍して年俸が上がると球団は彼らを放出した。その背景には、球団の経営が札幌ドームとの契約によって圧迫されていた、という部分もあったのだ。
2016年にファイターズは北海道で独自に球場を建設することを決定した。当初、新球場の予定地には札幌市も含まれていたが、札幌市に隣接する北広島市のアプローチもあり、北広島市に決定した。 2023年開場した、新球場エスコンフィールド北海道は、最新の「ボールパーク構想」に則った開閉式のドーム球場であり、飲食、物販などの施設も充実、周辺開発も進み、ドーム球場を核とする「新たな街づくり」と言ってもいい規模になりつつある。
対照的に札幌ドームは「開閉会式会場に」との期待もあった札幌冬季五輪も頓挫。ネーミングライツも不発となっている。 札幌市の収支見通しでは、2023年度決算では純損益2億9400万円の赤字となるものの、2024年度には黒字転換し、トータルの収支は900万円の黒字を確保するとしている。しかし毎日新聞の報道によると、3月14日の市議会第1回定例会第2部予算特別委員会で、2023年度は想定よりも赤字幅が拡大する見通しと明かされた。今のところ打つ手はことごとく裏目に出ている。
■思い出す「大阪ドーム」にまつわる迷走劇 関西在住の筆者は「大阪ドーム」にまつわる迷走劇を思い出す。関西財界の意向で1997年に開業した大阪ドームは、第3セクターの株式会社大阪シティドームによって運営された。周辺には商業施設も作られ、新たな賑わいが創出されるかと思われたが、本拠とした近鉄バファローズの観客動員は伸び悩み、球場使用料の負担にもあえいだ挙句「球界再編」でオリックス・ブルーウェーブと合併してしまう。