中国軍艦「第1列島線」に100隻展開の狙い 過去最大規模「海上軍事行動」と台湾 今までとレベルが違う「〝要の国家〟にも力を誇示か」
中国が過去最大規模となる計100隻近くの軍艦と中国海警局の船を第1列島線(九州沖―沖縄―台湾―フィリピン)周辺に展開していることが台湾当局者の話で分かった。台湾の国防部(国防省に相当)は、中国軍が事実上、海上演習を開始したとの見方を示した。演習の目的は「台湾封鎖の構えによる威圧」にとどまらず、第1列島線周辺で米軍などの軍事力を排除する「領域拒否」が狙いだと指摘した。 【写真】目も合わせず両手でガッチリ。首脳会談を前に握手する石破首相と中国の習近平国家主席 台湾当局者は10日の記者会見で、中国による過去最大規模の「海上軍事行動だ」と指摘した。軍艦60隻以上と海警船約30隻などが台湾や日本の南西諸島周辺、東シナ海、南シナ海に展開、海軍艦は模擬攻撃訓練などを行い、海警船は臨検などを訓練しているとしている。 中国軍で対台湾作戦を担う東部戦区に加え、北部戦区や南部戦区に所属する軍艦が確認されたという。 第1列島線は、中国が海洋上に一方的に設定した軍事的防衛ラインで、中国側には香港、台湾と沖縄県・尖閣諸島がある。 台湾国防部は9日には、中国軍が台湾対岸の福建省や浙江省の東側空域に航空機が許可なく進入するのを禁止する「保留区」を11日まで7カ所設定したことを明らかにした。何らかの演習や訓練を行う可能性を示すものだという。中国軍が10月と5月に実施した演習と比べると、今回は台湾を取り巻くような演習区域は設定されていない。 国際情勢が不安定なこの時期に、中国が100隻近くの艦船を展開した狙いは何か。 元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「一つには台湾の頼清徳総統が先月末からの外遊で、米ハワイ州や米領グアム、台湾を承認する太平洋諸国を歴訪したことを非難する中国側の反応とみられる。中国は、現在のような米国の政権移行期には過去にも揺さぶりをかけてきた。従来はこの海域で武装漁船などを使って『量』で圧倒する示威的行動をとってきたが、今回は軍艦などで行った点でレベルが違う。米国だけでなく、第1列島線の〝要の国家〟である台湾や日本に対して力を誇示した形だ」と指摘した。