怪文書や失踪事件など“のこされたもの”はなぜ怖い? ファウンド・フッテージが注目される理由【吉田悠軌×梨】
考察ブームにみんな疲れている?
吉田 でも完全に隠すことが最適解なのかというと、今はそうじゃなくなっているかもしれない。それはそれでもう浅いのかもしれないっていう。虚実の取り扱いがものすごい勢いで二転三転四転五転しているので、作者はどうすべきかの最適解の態度も常に流動している。 梨 特にホラー作品、またネットホラーだとさらにそうです。これはもう全く無責任な考察なんですけど、多分、2025年頃までには、ネット上に集積した情報で考察してもらうみたいな手法は、一回揺り戻しが起こるんじゃないか。「そういう考察はもう疲れたよ」みたいになる時期が来るんじゃないかなと思っています。 吉田 となると、スタンダードな骨太ホラー小説が流行る。 梨 骨太ホラー小説とか、あるいは最初から解説ありきというか、もう解説を地の文で提示しちゃう。あるいはちゃんとキャラクターがいて、小説として面白いみたいな感じの方に行くんじゃないかなと、私は思っているんです。 吉田 それはあり得るかもしれないです。私は最近、また篠田節子などの小説を読んでいますけど、やっぱり骨太感っていいなって思いますよね。 梨 こっちはカウンターですからね。他に骨太ホラーや実話怪談とかがあって、そのカウンターとしてようやく機能するコンテンツだと思っているので。ファウンド・フッテージが主流になったら、絶対に読み手は疲れるんですよ。 だってこんな、読み手に能動性を担保して、それでようやく成立するなんてものが乱立した場合、読者にとっては「それらを読み解くのに時間使ってくださいね」なんて知ったこっちゃねえよ、ってなるじゃないですか。 吉田 ひたすらカウンターであるという意見には、確かになるほどと膝を打つところはあります。もしそれがカウンターでしかないところから脱却するとしたら、それこそプロレタリア文学みたいな、なんらかの意義なりバックボーンをきちんと持つようになればいけるのかな。 梨 だから、次のステップにはそういうものがあるのかなと、今は思っています。 文/吉田悠軌 写真/長谷川健太郎 「行方不明展」概要 タイトル:行方不明展 場所:三越前福島ビル 住所:東京都 中央区 日本橋 室町1-5-3 三越前 福島ビル 1F ※東京メトロ「三越前駅」徒歩2分 開催時間:7月19日~9月1日 11時~20時 ※最終入場は閉館30分前 ※観覧の所要時間は約90分となります。 料金:2,200円(税込) 主催:株式会社闇・株式会社テレビ東京・株式会社ローソンエンタテインメント X(旧Twitter)アカウント:https://x.com/yukuefumeiten
---------- 吉田悠軌(よしだ ゆうき) 1980年生まれ。東京都出身。怪談・オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。実話怪談の取材および収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。『一行怪談』『日めくり怪談』『現代怪談考』『中央線怪談』ほか著書多数。最新刊は『ジャパン・ホラーの現在地』『教養としての最恐怪談』。 ----------
集英社オンライン
【関連記事】
- 知らない人が突然「トイレ貸してください」隅田川の花火大会のゴミ・トイレ問題はどうなる? 近隣住民は「目に余りすぎちゃうね」と憤慨
- 『奇跡体験!アンビリバボー』でなぜホラー回は放送されなくなったのか? 「怖かった! 終わり!」では済まないジャパン・ホラーの現在地【吉田悠軌×大森時生】
- 怖すぎてあわや公開中止に。100%近い確率で心霊現象が起こるヨコザワ・プロダクションの圧倒的な怖さと魅力をオカルト編集者・角由紀子が語る〈心霊ドキュメンタリー『新・三茶のポルターガイスト』〉
- 「読者に被害者になってもらうことで、当事者性を持たせたい」ネットホラーの寵児・梨が考える、この世で最も怖いと考える“恐怖の根源”とは?
- 「怪文書を壁一面にベタベタ貼って、通行人を嫌な気持ちにさせたい」伝説的イベント『その怪文書を読みましたか』の仕掛け人に聞く、新しいホラーエンタメの形