絶滅と思われたカエルを100年ぶりに再発見、生きた姿も初めて撮影、エクアドル
「激アツでした」と研究者、背中にW型の特徴的な隆起を持つPristimantis ruidus、アンデス山脈南部の環境保護に希望の光
生物学者のフアン・サンチェス・ニビセラ氏率いるチームは2022年、エクアドルのアンデス山脈にあるモレトゥロの森を探検していた。夜、数キロ離れたサンガイ火山が絶え間なく音を立てるなか、研究チームは満月の下で、新種や希少種、行方不明の両生類を探した。 ギャラリー:50年で200種が絶滅、愛すべきカエル写真13点 一瞬、火山の音がやみ、月明かりが森の真ん中にある倒木の下を照らし出した。彼らが近づいてみると、その場で識別できない小さなカエルが2匹いた。研究チームは2024年8月13日付けの学術誌「Zoosystematics and Evolution」に論文を発表し、2匹のカエルはPristimantis ruidusという種だと報告した。1922年に動物学者のジョージ・テイトがこの種を発見して以来、野生での目撃例がなかったため、国際自然保護連合(IUCN)は「絶滅した可能性がある種(possibly extinct)」に分類していた。 「この発見を知り、私たちは希望に満ちています」と生物学者のマリア・デル・カルメン・ビスカイノ氏は話す。氏はエクアドルで両生類の保護に取り組む26以上の組織から成る連合「アリアンサ・ハンバト」のディレクターだ。 ビスカイノ氏は今回の研究には関与していないが、P. ruidusはアンデス山脈南部を守る法廷闘争で「抵抗の旗」となりうると考えている。採掘と違法伐採が原因で、エクアドルで最も生態系が劣化している地域だ。
「完璧でした。記述も完璧に一致していました」
1970年代、爬虫両生類学者のジョン・D・リンチがエクアドル南部で数種を記載したが、P. ruidusに出会うことはなかった。その代わりに、リンチは50年近く前にテイトが採取して保存した標本をもとに、P. ruidusを記載した。 エクアドルの首都キトにあるサンフランシスコ・デ・キト大学のサンチェス・ニビセラ氏の研究室で、チームは採取した野生のカエルとリンチの記述を比較した。 2匹のカエルは、リンチが記載した通り、ザラザラの皮膚、体の凹凸、背中に特徴的なW型の隆起を持っていた。鼓膜が頭から突き出ているカエルもいるが、P. ruidusはそのように記載されておらず、2匹のカエルもそうではなかった。 「激アツでした」とサンチェス・ニビセラ氏は振り返る。「完璧でした。記述も完璧に一致していました」 さらに、エクアドル南部ロハにあるロハ技術大学の研究者が2匹のメスからDNAを採取し、遺伝子バンクに保存されているほかのPristimantis属35種のDNAと比較した。その結果、2匹の遺伝子はどの種とも一致せず、P. ruidusの再発見が裏付けられた。 「どの種とも一致しなかったのは、このカエルの遺伝物質が存在しなかったためです」とサンチェス・ニビセラ氏は話す。 P. ruidusの再発見は「エクアドルだけでなく世界で唯一の生息地かもしれない場所を保全するセカンドチャンス」だとロハ技術大学の爬虫両生類学者ディエゴ・アルミホス・オヘダ氏は考えている。 アルミホス・オヘダ氏は2021年、IUCNのグループの一員として、エクアドルの両生類に関するレッドリストを再評価した。この再評価では、エクアドルに生息する両生類の57%にあたる363種が脅威にさらされていると判明した。