これといった特徴もない「脇役」と思われていたのに…世間を騒がせた「心臓を持っている化石」テスケロサウルス論文が導き出した「衝撃的結論」
【シリーズ・小林快次の「極北の恐竜たち」】 今から何千万年も昔に、地球の陸上に君臨していた恐竜たち。シダ類やソテツ類の茂った暖かい地域で暮らしていたイメージがあるかもしれないが、彼らは地球上のあらゆるところに進出していた。南極大陸からも、北極圏からも恐竜の化石は発見されているのだ。 【画像】「隕石衝突が原因で絶滅」説の崩壊か…恐竜「北極圏で冬越し」していた証拠 この連載では、北極圏のアラスカで15年以上にわたって調査を続ける筆者が、極圏での厳しい環境で、どのように恐竜たちが暮らしていたのか、その生態と進化の謎に挑むーー。 これといった大きな特徴もなく、「脇役的」と見られた恐竜に、世間を騒がせる報告がなされました。なんと、心臓が発見されたというのです。さらに、その心臓と思しき器官の構造から、これまでの恐竜の常識を覆す、衝撃的な調査結果が提出されたのです。
ハドロサウルス科の恐竜と周囲の動物たち
「白亜紀の牛」とも呼ばれるハドロサウルス科の恐竜たち。これまで見てきたように、白亜紀末のアラスカ州には、ハドロサウルス亜科に属するエドモントサウルスや、名前が特定されていないランベオサウルス亜科の恐竜が生息していたことが確認されている。 これらは大型の植物食恐竜であるが、その周りにはどのような動物たちが棲息していたのかという点については、コルビル川沿いに露出する地層が重要な手がかりとなっている。 *【極北の恐竜たち】アラスカを闊歩していた…ハドロサウルス科の恐竜たちの記事はこちら
小型の恐竜、テスケロサウルス類
アラスカ州からは、小型植物食恐竜のテスケロサウルス類が発見されている。あまり聞き馴染みがないと思うので、ここでどのような恐竜なのかを紹介しよう。 テスケロサウルス(Thescelosaurus)は、約7200万~6600万年前の白亜紀後期に生息していた鳥脚類の恐竜である。この恐竜はカナダのサスカチュワン州やアルバータ州、アメリカのモンタナ州、サウスダコタ州、ワイオミング州といった、現在の北米大陸の広範囲にわたる地層から見つかっている。 テスケロサウルスは1913年にチャールズ・ギルモアによって初めて記載されており、当初は他の恐竜と同じ仲間に分類されていたが、後の研究によって独自の特徴が確認され、現在ではテスケロサウルス科に分類されている。 この恐竜の主な特徴としては、頭部の中央部分が広く、前後に短いことや、上顎に粗くて丸い斜めの稜線があること、さらに頬の下側に斜めの稜線で覆われた窪みがあることが挙げられる。また、頭の上部には小さな孔があり、これは目の窓につながっている。 しかし、このような特徴は派手さに欠け、覚えやすいものではないため、ある意味で「脇役的な恐竜」といえるかもしれない。