【更年期の基礎知識 】更年期によく使われる7つの漢方薬! どんな体質のどんな症状に向くのかを解説
更年期症状の代表的な漢方には加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸がある。そのほか半夏白朮天麻湯、抑肝散、加味帰脾湯、補中益気湯などもよく処方される。同じ症状でもその人の「証(体質や体調)」によって出される漢方薬が違うことも。それぞれの漢方が、どんな体質の人の、どんな症状に向いているのかを産婦人科医の小川真里子さんに解説してもらった。
Q. 漢方薬とHRT(ホルモン補充療法)の併用はできる?
A. できます。より効果が出る場合も 「漢方薬はHRT(ホルモン補充療法)と並ぶ、更年期症状の治療方法のひとつ。日本では知名度が高いこともあり、第一選択肢となることが多いですね。 例えば、めまいなどの症状では、漢方薬のほうがHRT(ホルモン補充療法)よりも改善効果は高く、ホットフラッシュに関してはHRTのほうが効くという検証結果があります。症状の出方によっては、HRTと併用することもできます」(小川先生) 漢方薬は東洋医学の「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方がベースになっている。気は生命活動のエネルギー、血は血液の循環、水は水分代謝を表し、このバランスがくずれると心身に不調が現れる。 更年期症状に処方される3大漢方薬が加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸だが、人には個々に「証(しょう)<体質や体調>」があり、それを見極めて薬を処方するので、同じ症状でも違う薬を出されることがある。自己判断で服薬すると効かない場合もあるので、専門家に見立てて処方してもらうことが大切だ。
【気・血・水の考え方】 東洋医学では、体の調子が悪いのは気・血・水のバランスが乱れることで起こると考える。おもに気の乱れはイライラやうつ状態、血の乱れは便秘や肩こりに、水の乱れはめまいやむくみに
よく使われる漢方薬
●加味逍遙散(かみしょうようさん) 虚弱体質で気と血が乱れているタイプの、イライラやうつ症状に。 ●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 体力がなく特に血と水が乱れて冷える人に。めまい、肩こりなどにも。 ●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 体力があるタイプで、ほてりやのぼせる人に。頭痛にも効果がある。 ●半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) 胃腸虚弱の人やめまいに。ほかに頭痛や冷えにも処方される。 ●抑肝散(よくかんさん) 体力は中程度でイライラしやすい人に。不眠にも処方される。 ●加味帰脾湯(かみきひとう) 虚弱体質&胃腸が弱いタイプで、精神不安や不眠の症状がある人に。 ●補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 胃が弱く食欲が低下して、元気が出ない、手足に倦怠感がある人に。 証にもよるが、特にメンタル不調に効くのが加味逍遙散、めまいや冷えにいいのが当帰芍薬散、ほてりやのぼせには桂枝茯苓丸がよく処方される。
【教えてくれたのは】 小川真里子さん 産婦人科医、医学博士。東京歯科大学市川総合病院産婦人科 准教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心理医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクロノジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート 構成・原文/山村浩子