【パリ五輪が見せる“新しさ”】開会式、競技会場で古い物を惜しみなく活用、都市開発のバネとしての役割も
ロンドン、東京と共通すること
パリ大都市圏の中では移民も含め比較的所得の低い人たちも多く住む北部地域一帯に選手村をはじめ新設の五輪施設を配置し、この地域の雇用を増進しようという計画は、ソーシャル・インクルージョンやダイバーシティを推進しようとする近年のヨーロッパ諸国に支配的な風潮とも軌を一にしている。 五輪に伴う北部開発の考え方は、ロンドンが12年五輪を機にそれまでプラウンフィールドと言われた東部地帯の再開発を、東京が五輪を機に東京東南部のウォーターフロント開発推進を図った点と似ている。奇しくも21世紀に入ってからの先進3都市における五輪は、広域的な都市構造の再編と深く関わっていたといえる。 パリ2024年五輪の真のレガシーは何かを将来問うとしたら、ロンドン、東京の都市構造のその後の発展を比較するなかで検証すべきだと言えるのではないか。どの都市も五輪を単にイベントとしてだけでなく、世界的な大都市の競争的発展のバネにすることを意図している。 東京も、五輪自体はコロナ禍のため無観客の開催となったためチケットは払い戻したが、その後の、たとえばウォーターフロントを中心とした有楽町線延伸、南北線の白金高輪から品川への延伸、臨海地下鉄計画の具体化、JR羽田空港アクセス線事業の進展など、めざましい変化を見ると、都市構造的な発展という面では五輪開催の効果が大いにあったと評価することもできる。 高度情報化時代であるからこそ、大都市はその発信力と基礎的体力の一層の充実に向けて努力する。五輪は祭りでありながら単なる祭りで終わらない。祭りの根底にある、大都市の真のねらいを読み解くことが大切である。
青山 佾