【パリ五輪が見せる“新しさ”】開会式、競技会場で古い物を惜しみなく活用、都市開発のバネとしての役割も
2024パリ五輪が始まった。鉄道テロがあって五輪関係の交通が乱れたり、警察のみならず軍隊が警備していたりして物々しい五輪となってしまったが、フランスらしい工夫も多い。 【写真】バリアフリー化を果たしたクーベルタン競技場 開会式ではグラン・パレや、アレクサンドル3世橋、ルーブル美術館、オルセ美術館、エッフェル塔、アンバリッドなど世界的に知られた歴史的建造物を惜しげもなく使った。競技面ではコンコルド広場でスケートボードなど4競技、エッフェル塔周辺でビーチバレー、グラン・パレではフェンシングとテコンドー、アンバリッドでアーチェリー競技や陸上競技が実施される。 近代5種や馬術はヴェルサイユ宮殿で行われる。マラソンコースは、これまた荘厳な歴史的建造物であるパリ市庁舎をスタートしオペラ座、ルーブル美術館前を通ってヴェルサイユ宮殿近くで折り返しアンバリット、エッフェル塔を目指す名所めぐりコースとなっている。 パリ五輪組織委員会は、今回の五輪をカルチャー・オリンピアと称していて、スポーツと文化の「結婚」を目指している。開会式ではフランスがもつ魅力的なイベント開催能力を遺憾なく発揮したが、同時に文化遺産を最大限活用し、当初の目標を達成したのである。
できるだけお金はかけない
パリ五輪組織委員会によると、歴史的建造物を含め、古いものを惜しみなく使うことによってフランスらしい五輪をアピールすると同時に、開催経費をできるだけ抑えた。その代表例のひとつが、1937年につくられたピエール・ド・クーベルタン競技場というパリ市西部にあるハンドボール・バスケットボール競技場の活用である。 ここは観客4000人あまりの小さな競技場で、ふだんは公式競技に使用しているが大規模な観客数を必要とする五輪競技には使えない。今回はパラリンピックを含めた練習場等として活用するため観客席の大改造、大型エレベーター設置、更衣室の改造などを2年かけて施した。観客席が約4000席から約3600席に減ったものの、徹底的な改造でバリアフリー化した。 クーベルタンの没年につくられた歴史的な建造物だが、今後のハンドボールやバスケットボール競技場としての活用のためにはこの際、バリアフリー化することによってさらに長い年月の使用に供することができると考えたという。