広告界のガリバー電通の新しい取り組み
この10年で従業員が3倍に増え、しかも海外の方が多いという電通。 「B2B2S」というスローガンのもと、新しいビジネスに挑戦しつつある。巨大広告会社の変貌ぶりを探った。(編集部)
変貌する電通が推進する「B2B2S」
大手広告会社はこの10年ほど大きな変貌を遂げているのだが、特に電通グループはそれが顕著だ。㈱電通コーポレートワンの河南周作エグゼクティブコミュニケーションオフィサーに話を聞いた。 「電通グループは145カ国・地域において、事業を推進しています。『ワン・マネジメント・チーム』によるグローバル経営体制のもと、One dentsuとして4地域制(日本、米州、EMEA、APAC)で事業運営を行い、グループ内の多様なケイパビリティを統合して、顧客企業の事業成長に貢献しています。 従業員数は昨年末時点で約7万1000名。2013年3月の英イージス・グループ買収前はグループ全体で2万2000名、買収後に3万6000名になりました。真のグローバルカンパニーになる買収前からすると、この10年間で従業員数は3倍以上に増加し、売上総利益も3倍以上に成長しました。 昨年12月末時点の連結子会社数は国内150社、海外658社。持分法適用関連会社数は国内65社、海外20社です」 10年で従業員が3倍に増え、しかも国内より海外の従業員の方が多いというわけだ。今後の行方はどうなるのか。 「私どもは『人起点の変革』を実践し、すべてのステークホルダーにとっての企業価値の最大化を加速することをめざしています。これまで企業理念として掲げてきた『an invitation to the never before.』を改めてパーパスとして位置づけました。これは、多様な視点を持つ人々とつながりながら、かつてないアイデアやソリューションを生み出し、社会や企業の持続的な発展を実現するために存在することを意味します。 電通グループは、人と人とがつながることで生まれる無限の可能性を信じ、グループ社員だけでなく、顧客企業やメディア、テック企業なども含めた人と人とのつながりからイノベーションを生み出す“オープンチーミング”を得意としています。この強みを生かし、今後も世界中の多様な人々をつなぎ、そこから生まれるイノベーションの力によって課題を解決し、よりよい社会の実現に貢献していきたいと考えています。この実現に向けて、電通グループは価値創造モデル『B2B2S』(Business to Business to Society)を推進しています。すなわち社会課題に端を発する顧客企業の事業課題の解決を通じた、社会への貢献です」 広告会社による一般消費者向けの事業(BtoC)は限定的だが、BtoBの先のS、つまり社会課題の解決を掲げているのが電通グループならではの特徴だ。 そうした電通の今の姿を象徴する幾つかの取り組みについてレポートしよう。