広告界のガリバー電通の新しい取り組み
昨年開業の北海道ボールパークFビレッジ
電通にとっても新しい取り組みといえるのが昨年開業した北海道ボールパークFビレッジだ。 札幌ドームを本拠地としていた北海道日本ハムファイターズが、新たに自前の球場を作る構想を発表したのは2017年6月だった。北広島市が「究極の地方創生」を掲げて誘致に名乗りを上げ、建設地が北広島市総合運動公園に内定した18年3月には準備会社として㈱北海道ボールパークが発足した。単に球場を作るだけでなく、世界に誇れるスポーツを起点にした新しい街づくりを行うという大きなプロジェクトだった。 その㈱北海道ボールパークに電通は29.63%の株式保有という形で関わった。出資だけでなく、多岐にわたるリソースを注入しながら事業に伴走していくことは、電通グループが目指すIGP(Integrated Growth Partner)を象徴する取り組みだという。そのボールパークが、昨年3月、開業したのだった。 今回話を聞いた電通フューチャークリエーティブリード室の倉田亮シニアソリューションプロデューサーは2018年3月から㈱北海道ボールパークへ出向し、㈱ファイターズ スポーツ&エンターテイメントが設立された19年10月から21年3月まで同社経営管理や事業企画を担当。現在はスタジアム・アリーナプロジェクト全般のほか、企業や社会の未来作りをプロデューサーの立場で担当している。社員が出向の形で現地で取り組むというあり方に、電通の意気込みがうかがえる。 「元々かなり壮大なプロジェクトで、球場を作るという話だけではなく、街づくりの一環として世界に誇れるような『共同創造空間』をみんなで一緒に作っていきたいというものでした。『世界がまだ見ぬボールパークをつくろう』というスローガンを掲げて、官民一体となって推進してきました。電通としては初期の段階から出資をしつつ、クリエイティブをはじめとする様々な領域でプロジェクトを一緒に推進させていただいています。 2023年の開業は大きな節目ではありましたが、これからも進化し続けるプロセスの一環と思っています。1年目として野球興行で200万人、それ以外で100万人の計300万人の来場を目標に掲げていたんですが、実際には350万人弱の方にご来場いただきました。関係する皆さんと一丸となって、想像を上回る成果を上げたのは確かです。 北海道全体で応援していただいて道内の方にたくさん訪れていただいたのですが、道外から来られた方も350万人のうち、全体の28%、約100万人いました。もともと北広島市としても人口減少とそれに伴う税収の低下に歯止めをかけたいという狙いで誘致を行ったわけですが、成果は明らかにありました。今年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表したデータでは、北広島市における経済効果は500億円超とされました」(倉田プロデューサー) 北海道ボールパークFビレッジは軌道に乗りつつあるといえるが、電通としては今後、ここで得た知見を活かしてどんな関わりをしていこうとしているのか。 「私が現在所属しているフューチャークリエーティブリード室というのは、今年1月にスタートした部署になります。もともとフューチャークリエーティブセンターというバーチャルな組織があって約90名のメンバーと500以上のプロジェクトが動いています。そのバーチャル組織のプロデュース機能を強化し、『クリエイティブとプロデュースが融合する新しい場所』として発足しました。今後はスポーツはもちろんスポーツに限らず、全国津々浦々で地域貢献、地域創生のプロジェクトをデザインしていくことを、組織及び個人のミッションとして掲げて行きたいと考えております」(同)