ユニクロ柳井正に学ぶ「仕事ができない人」と「結果を出す人」の決定的な違い
ユニクロを運営するファーストリテイリングの売上高が初めて3兆円を突破し、営業利益も過去最高を更新した。会長兼社長の柳井正氏は、今後の成長のために人材投資こそが「最も重要」と力説する。そんな柳井氏が教える「知識だけの専門家」と「結果を出す人間」の違いとは?(イトモス研究所所長 小倉健一) ● 柳井正の「ゾウ」のたとえ 「わたしはよくゾウの話をするのですが……」 『財界オンライン』(4月17日)のインタビューにそう切り出したのは、ユニクロを運営するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏だ。 このゾウの話が、今回のキモになるのだが、いきなり本題に入ってもよくわからないと思うので、まずは最近の決算や柳井氏の発言について解説していく。読んでいけば、なぜ、柳井氏がゾウの話をよくするのかがよくわかるはずだ。 ファーストリテイリングが発表した2024年8月期(2023年9月1日~2024年8月31日)決算によると、同社は売上収益が前年比12.2%増の3兆1038億円、営業利益が同31.4%増の5009億円と、いずれも過去最高を達成した。「絶好調」という評価に相応しい業績だ。 10月10日に、東京ミッドタウン カンファレンスで開催された決算説明会において、絶好調の要因について、同社は下記のように説明した。 《今期は、収益の柱の多様化がさらに加速し、グローバル全体で稼げる体制がより強固になりました。 ユニクロの知名度がグローバルで高まっていることで、 各国・各地域で、現地の顧客層が拡大していることに加え、観光客の需要も取り込めたことで、 非常に好調な業績となりました》
● ユニクロに「足りていないもの」 《上期(秋冬)の利益が大きく、下期(春夏)が少ないといった利益構造から、下期もしっかり稼げる体質に変革いたしました。これは、春夏商売の柱となる商品が拡充したことに加え、シーズン末まで戦略的に売れ筋商品の在庫をもち、ニュースを継続的に発信したことで、下期の商売をさらに拡大できたためです》 《特にこれまで下期は利益が出にくかった欧米のユニクロ事業でも、2桁の営業利益率を継続的に出せる収益構造になりました》(岡﨑 健・グループ上席執行役員 CFO) さて、この決算説明会では、柳井氏が人材論を語る場面があった。 《今後の成長において、最も重要なことは人材投資です。グループ全体の経営者、各国・各機能の経営者の発掘と成長、そして一番大切なのは、世界各地の店舗を支える店長や販売員の育成です》 《世界中で良い人を採用し、各人の志と会社の理念が一致し、店主・経営者として精一杯、日々の仕事に向き合う。そして、会社と社会に役立つ人材へと成長していく、そのような人の集団にすべく、今後も人材育成に惜しみなく投資していきます》 《自社の理念を共有し、実現するための経営人材の育成を考えれば、 すべての人材が、長期的視野で企業理念や価値観を深く学び、 継続的に成長していく教育体制が必要です》 《そういう考え方でこれまでもやってきており、土台はできています。大切なのは、上司が部下に会社の理念と考え方を明確に伝えること、 そして、部下が上司を超えるレベルに成長することだと考えています》 残念ながら、人材についての一般論を述べている印象だ。柳井氏のこれまでの発言や著作を追っている人ならともかく、これだけでは腑に落ちる人は少ないだろう。 決算説明会では、アナリストから好調な決算を前提として、今のユニクロに足りていない部分を問われる一幕があった。柳井氏は次のように答えている。少し長いが重要な部分なので、丁寧に文字起こしをしてみた。