ヤマビルとの戦い/執筆:片岡メリヤス
先日、妙義山へTと日帰り登山に行った。 久しぶりの本格的な岩稜帯にドキドキ、真夏の低山だし熱中症に要注意。そんな不安を吹き飛ばし、私たちにあっさり下山を決意させたのがヤマビルだった。 片岡メリヤスさんの1ヶ月限定寄稿コラム/TOWN TALK
「4月~11月、雨の翌日の妙義山はヤマビルに注意!」と行く前に調べたらそう書いてあった。 山でヒルを気にしたことはなかったけど、対策して行った方が良さそうだから虫除けスプレーと塩を持参。出発前は虫除けを登山靴に重点的に吹き付け、首にはてぬぐい、長袖Tシャツはズボンの中、ズボンは靴下の中、とにかく素肌への侵入経路を断つ。 妙義神社の登山道入口から登り始めて30分、Tが「ヤマビル! いた!」と言ったのを号令のように、パッと見ただけでTの登山靴に3匹ウヨウヨ。尺取り虫の動きで登山靴によじ登り、口がタコの吸盤みたいに靴や靴下にくっついて振り払おうとしても全く離れない。登山靴の中にも入ってくる。ああ~……。 とにかく振り落とせないから葉っぱで摘んで遠くへ投げたり、虫除けスプレーをかけたり。地面を見ると“ここにも、そこにもいる”という状況。もはや登山どころじゃない……と2人して意欲をなくし下山。 吸盤で吸い付いて顎が3つに開いてギザギザの小さな歯で食いついて吸血するらしいけど、もはやそれって宇宙人だよ。そしてこんなにウヨウヨいるものなの? 想像と違う。いるとは思っていたけどたまに靴に付いてくるくらいかと思ってた。 下山したけどせっかく来たから周辺の安全な道路を歩きまわり、昼過ぎに他の登山道に入ってみた。もしかしたらヒルが活発になるのは朝だけなのではと思ったからだ。 最初の10分は地面も乾燥していて出てこなそう。少し下ると沢がありジメジメしてきて 「こういう所にいそうだな~」と思って目を凝らすと T の靴下にヒルが! 「ヒルくっついてる!」と言って葉っぱで掴んで取ろうとしたけど、大きくてなかなか離れず、どんどん動いて靴の中に入って行こうとするから慌てて掴んで取ったら私の人差し指にくっ付いた。 「ぎえ~! ついに素肌に吸いつかれたー!!」 と思って引っ張ろうとしたらTに「無理矢理引っ張っちゃだめ!」と言われ、「そうだった~」と思って、ちょっと冷静になった私は吸い付いているヒルの口を見つめ「ちゅぱってしてるな、よく見るとかわいいかも……」と思った。 Tが虫除けスプレーを出して吹き付けたら、ポロっと取れて指は無傷だった。すぐに吸血するわけではなさそう。