和歌山県の鉄道「総崩れ」の危機? 年間30億円の赤字垂れ流し区間も! 人口維持さえ難しい現状、国への要望だけで路線を守れるのか
赤字額年間約29億円
和歌山県を走る鉄道の利用者が急激な人口減少と車社会の進行で“危険水域”に陥っている。特に、利用促進の協議が始まっているJRきのくに線白浜以南の将来は不安でいっぱいだ――。暮れも押し詰まった2024年12月中旬、JR和歌山駅(和歌山県和歌山市)にパンダのラッピングを施した特急「くろしお」がやってきた。夏の観光シーズンと違い、車内は閑散としている。和歌山駅を出たくろしおは、温泉やパンダで有名な観光地を抱えるJR白浜駅(白浜町)で大半の乗客を降ろし、さらに南のJR新宮駅(新宮市)へ向かう。 【画像】「すげぇぇぇぇ!」これがJR東日本の「平均年収」です! 画像で見る(18枚) 運行している路線は紀勢本線。JR亀山駅(三重県亀山市)から紀伊半島を海沿いに回り、JR和歌山市駅(和歌山市)へ至る384.2kmの路線だ。亀山駅から新宮駅までをJR東海、新宮駅からJR和歌山市駅までをJR西日本が運行し、新宮~和歌山間にきのくに線の愛称がつけられている。 沿線のうち、新宮~白浜間95.2kmは、1987(昭和62)年度に4123人あった輸送密度(1km当たりの1日平均輸送人員)が、2023年度で935人に落ち込んだ。国土交通省の有識者会議が路線のあり方を見直す基準として示した輸送密度1000人を下回る。しかも、2023年度の赤字額は約29億円。運行本数も減る一方で、おおむね1時間に1本程度しかない。
人口半減と競争力不足が突きつける現実
沿線は急激な人口減少が続き、最も人口が多い新宮市で約2万6000人。あとは人口2万人に満たない小規模自治体ばかりだ。串本町やすさみ町、古座川町、太地町、那智勝浦町は2050年に2020年比で人口が半減すると推計されている。普段使いで利用を増やすには限界が見える。 期待されるのは観光利用だが、高速道路は徐々に紀伊半島南部まで進み、大阪市から所要時間約3時間で最南端の串本町に到達する。料金はETC利用で4000円足らず。これに対し、特急列車はJR大阪駅(大阪市北区)からJR串本駅(串本町)まで約7400円の運賃で3時間半近くかかる。所要時間、交通費とも競争力がない。 和歌山県と白浜町以南の沿線8自治体、JR西日本、和歌山大学は2022年、紀勢本線活性化促進協議会内に新宮白浜区間部会を設置し、利用促進策の検討に入った。 ・サイクルトレイン(自転車をそのまま持ち込める鉄道サービス) ・観光列車の運行 ・団体利用への運賃補助 などの対策を打ち出してきたが、まだ効果は見えない。 沿線の一部自治体から「この人口減少下で利用増は困難」と厳しい見方が出るなか、部会の事務局を務める新宮市企画調整課は 「沿線で実施したアンケート調査を分析し、新しい施策を検討したい」 とあきらめていない。