和歌山県の鉄道「総崩れ」の危機? 年間30億円の赤字垂れ流し区間も! 人口維持さえ難しい現状、国への要望だけで路線を守れるのか
特急列車の目標設定で混乱
JR西日本は新宮~白浜間の輸送密度や営業収支を毎年公表しているが、直ちに路線廃止を視野に入れた協議を求めているわけではない。ただ、部会の初会合で 「大量輸送という鉄道の特性が十分に発揮できていない」 と述べ、将来のあり方について検討が必要との考えを示唆した。 JR西日本が2024年4月に提示した輸送密度2000人達成に向けた特急利用者の目標値も議論が沸騰した。提示内容は「あくまで一例」として示したものだが、 ・新宮駅(和歌山駅方面):84人(2022年) → 240人(2026年、186%増) ・紀伊勝浦駅:137人 → 450人(228%増) ・串本駅:58人 → 210人(262%増) ・白浜駅(新宮駅方面):14人 → 40人(186%増) という現実離れした高い数字が並んでいた。 沿線自治体のうち、串本町は地域公共交通計画で駅乗降客に現状維持、新宮市、那智勝浦町、白浜町は微増の目標値を掲げている。多くの自治体がJR西日本の数字を 「廃止に向けた議論と誤解される」 などと反発し、8月の会合で ・新宮駅:105人(25%増) ・紀伊勝浦駅:185人(35%増) ・串本駅:66人(14%増) ・白浜駅:16人(14%増) と修正された。自治体の主張が通った形だが、この数字で経営改善は望めない。 串本町の民間ロケット発射場から12月中旬に打ち上げられた小型ロケットのカイロス2号は、紀伊田辺駅(田辺市)~新宮駅間を走った臨時列車に多くの乗客を集めた。那智勝浦町観光企画課は 「利用促進に役立ちそう」 と期待するが、打ち上げ回数が大幅に増えなければ波及効果は小さい。
私鉄路線も厳しい状況に
和歌山県内で経営が厳しい路線はきのくに線の新宮~白浜間だけでない。南海電鉄高野線の紀伊清水駅(橋本市)以南や和歌山市を走る加太線、和歌山港線、御坊市の紀州鉄道、和歌山市と紀の川市を結ぶ和歌山電鐵の貴志川線も苦しい状況に追い込まれている。 南海加太線の駅別1日平均の乗降客数は2023年度で127~1293人。1日1万人以上の乗降客を持つ駅が並ぶ南海本線に比べ、1~2けた少ない。和歌山港線や高野線の紀伊清水駅以南も同様だ。 紀州鉄道は年間数千万円程度の赤字を計上している。運営する東京都の不動産開発会社は赤字を 「企業イメージ向上の宣伝費」 と割り切っているが、踏切など安全施設の更新も苦しいという。ネコの駅長で注目を集めている和歌山電鐵は、2023年度決算の純損失が約1400万円。決して安心できる経営状態ではない。