「パ、パリ五輪…大丈夫なのか」サッカー取材記者が運営に呆れたウラ話「あら、試合あるの?」フランス人女性の認知度も“その程度”だった
五輪初戦のちボルドーに向かおうとしたら
今大会の取材は、マルセイユ近郊のマルモールから始まった。 マルモールはマルセイユまでバスを乗り継いで2時間半、人口6000人強の小さな村。大岩ジャパンが五輪に向けた準備を行ったマルモールスポーツコンプレックスは――意外にもと言っては失礼だが――1984年にフランス代表がプラティニらを擁して欧州選手権優勝を果たしたときにも合宿地として使用された、歴史ある由緒正しき場所だった。 そんな縁起の良い施設での合宿を終え、いざ五輪初戦の地ボルドーへ向かおうとしたときのこと、ひとつめのトラブルに遭遇しかけた。 当時、大きなニュースにもなったが、マイクロソフトのクラウドサービスが何らかの理由でシステム障害を起こし、多くの航空会社で予約システムがダウンするなど大混乱をきたしたのだ。この件が最初に報じられたのは18日で、我々取材陣がマルモールを離れ、マルセイユ空港からフライトでのボルドー入りを予定していた19日の前日だった。結論から言えば我々が使ったフライトは影響を受けなかったが、KLM(オランダ航空)などではフライト取りやめなどトラブルに発展していたため、通常よりもかなり早い時間に空港に向かったことを思い出す。 文字にしてみれば、ただそれだけのことではある。だが、仮にフライトがキャンセルになったらどこに宿を取るのがベストか、フライトは自分が取り直すのか、航空会社が手配するのか、いつの練習取材に間に合うのか、そして原稿はどうするのか……初戦直前ということで取材面で考えることが多いのに、それに加えてと思うとゾッとするばかりだった。
地元女性「あら、ここでも五輪やるのね?」
ボルドーには10日ほど滞在した。ボルドーは想像よりも多くの観光客が訪れており、街は五輪と関係なく夏のバカンスのために賑わっていた。ある日、非公開練習のために練習場となっていた小さなスタジアムの外で待機していた時のこと。ご近所に住んでいると思しき女性にフランス語で話しかけられた。 「あなたたちどこからきたの? ここのスタジアムで何があるの? なんでこんなにたくさんの人がいるの? ?」 それに対して、トルシエ取材などでおなじみ田村修一氏がおしゃべりに応じた。 「五輪があって、日本代表はボルドーで試合をするんですよ。で、そのための練習をここでしているんです」 女性の返答は、意外なものだった。 「あら、ここでもオリンピックの試合があるのね? 近所に住んでいるけれど全然知らなかったわ。どこと試合するの? いつ? あらそう。がんばってねー」 驚くことにボルドーの人たちは、ここが会場になっていることを全く知らなかったのだ。 フランス高速鉄道TGVのボルドー駅も、街中の主要なバス停も五輪仕様になっていたのだが、スポーツに興味のない市民の目には全く留まっていなかったようだ。しかも、この手のやりとりは一度ではなかったので、この時の女性が例外だったわけではない。