「減税したら税収が増えるというのは幻想」 過去にアメリカも大失敗…「現在よりもインフレで苦しむ人が出るリスクも」
「130万円の壁」とは?
「もう一つのパターンは、勤め先が50人以下の小さい会社でも当てはまります」 と、稲毛氏。 「このケースではいわゆる『106万円の壁』はありません。とはいえ、月収10万8000円(年額130万円)になる働き方をする場合には、妻は夫の健康保険の被扶養者でなくなってしまうので、その段階で自分で保険に入ることになります。このケースは『4分の3基準』を満たすなら社会保険で、そうでないなら国民健康保険と国民年金の組み合わせとなります」 「130万円の壁」とはこの節目のことである。 全国紙デスクが言う。 「厚生労働省は月額8万8000円の『賃金要件』や企業の規模に関する要件を撤廃する方針を固めています。それらが撤廃された後は、週20時間以上働くと厚生年金に加入することになります」 こうした動きについて、マスコミは「106万円の壁撤廃へ」などと報じている。
「必ず財源とセットで検討すべき」
玉木代表の政策の本質である「基礎控除の引き上げ」に話を変えよう。非課税枠が178万円まで引き上げられた場合、約7兆円の税収減となるが、最大の問題は財源をどうするか、という点。 明治安田総合研究所フェローチーフエコノミストの小玉祐一氏が言う。 「こういう話は必ず財源とセットで検討すべきだと思っています。少なくともいたずらに赤字国債を発行してカバーする、といった形ではやるべきではない、と考えています」 玉木代表は財源についていくつかの案を提示している。その一つが「外国為替資金特別会計の含み益を使う」というものだ。 「これは過去の為替介入の結果として積み上がってきたものです。が、すぐに動かせるお金はそれほど多くないし、介入のための資金が枯渇するのではないか、という不安もマーケットにはある。そもそもこのお金は普通の財政とは別の財布なので、本来の目的以外には使うべきではないと思います」(同)
「減税したら税収が増えるというのは幻想」
慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の小幡績氏もこう語る。 「岸田文雄前首相の時の減税策は単年度でしたが、玉木さんの政策が実現すると、今後毎年約7兆円もの税収減になる。外国為替の含み益を使って今年は間に合ったとしても、来年や再来年はどうするのでしょうか」 また、手取りが増えるなどすれば「法人税も消費税も所得税ももっと伸びるでしょう」と玉木代表はXで主張しているが、 「減税したら税収が増えるというのは幻想で、過去ほとんどの国で失敗しています」 と、小玉氏は指摘する。 「代表的なものがアメリカのレーガン大統領がやったレーガノミクス。減税することで景気が良くなって税収が増える、という考えをそのまま実践したところ、結局は大幅な財政赤字、経常赤字に陥り、有名な『双子の赤字』という状態になってしまいました」