【時視各角】韓国の非常戒厳事態、ハマスと金正恩が思い浮かぶ理由
1日、パレスチナ中央統計局はガザ戦争で約5万5000人が死亡したと発表した。開戦から15カ月間、イスラエル軍が民間人居住地だけでなく学校と病院、国際機関の事務室にも爆撃と銃撃を浴びせた結果だ。人種清掃に近い虐殺だ。 ところが虐殺の残忍さに埋もれて照明が向けられていないことがある。ガザ地区を統治してきたパレスチナ武装組織ハマスはどんな目標と戦略を持って戦争を始めたかという点だ。2023年10月7日、ハマスは数千発のロケット弾攻撃と共にグライダーとオートバイに乗って攻め込み、約1200人を殺害、251人を拉致した。単純なテロとは見なせない戦争行為だ。開戦の理由についてはイスラエル極右勢力が起こしたテロに対する報復レベルという分析もあり、イスラエルとサウジアラビアの修交を妨害するためという見解もあった。ところがその後、ハマスはイスラエルの反撃にまともに抵抗できなかった。指導者は迷路のようなトンネルの中に隠れ、ガザ地区の民間人を盾にしながら延命しようとした。いくら神聖な目的だとしても、このように無気力に民間人の犠牲を放置する状況を合理化することはできない。 あきれるような死はロシア-ウクライナ戦争でも続いている。ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、クルスク戦線に投入された北朝鮮軍がわずか2日間で1個大隊が全滅する被害を受けたと主張した。派兵戦力およそ1万1000人のうち約3000人の死傷者が出たという集計もある。最近ウクライナ当局が公開した北朝鮮軍との交戦映像は戦闘とみるより狩猟に近かった。戦況と戦術を熟知せず死地に送り出された兵士らは果てしなく追いかけてくるドローン攻撃に対処できず倒れた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はどんな目標と計画を持って彼らを死地に送り出したのだろうか。 昨年12月3日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が不意に発表した非常戒厳は韓国の民主主義を45年前に戻した。捜査と証言を通じて次々と明るみに出ている戒厳準備過程は一つ一つがあきれて怒りが爆発するほどだ。中でも最も衝撃的なのが戒厳の名分を得るために北朝鮮の軍事的行動を誘導しようとしたという疑惑だ。民間人の身分で現役軍人を操って戒厳計画を立てた疑惑を受けるノ・サンウォン元情報司令官の手帳には「北方限界線(NLL)で北の攻撃を誘導」と書かれていた。ノ氏が陳述を拒否し、軍当局が強く否認しているため、捜査が必要な部分だ。しかし昨年から金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官が汚物風船に対する原点打撃を主張し、突然北朝鮮が韓国から無人機が飛んできてビラをばらまいたと非難した事実を考慮すると無視するのも難しい。 韓国軍当局によると、北朝鮮は首都圏を狙って約340門の長射程砲を配備している。1時間あたり1万6000発を撃つことができる戦力だ。性能改良を続けてきた短距離弾道ミサイルと混ぜて使用すれば韓国の迎撃体系で完全に防げるとは断言できない。実際に原点を打撃する場合、北朝鮮が戒厳の名分を与える程度の制限的な対応をするという自信はどこから出てきたのか気になる。戒厳勢力は反国家勢力の剔抉のためなら「その程度」の被害は甘受すべきという考えを持っていたのだろうか。 尹大統領の行動は最後まで醜く無責任だ。「戒厳に伴う法的責任は避けない」という発言が色あせるように警護処職員の後ろに隠れ、裁判所が発付した逮捕状の執行にも抵抗している。警護処の職員らが公権力の行使を阻止して法律違反者になろうと、自分さえ安全なら何とかなるという考えであるようだ。トンネルの中に隠れ、民間人が死のうと傷つこうとかまわないハマスの指導者や、異国に若い兵士を送り出して自分は安全なところばかりを訪問する北朝鮮の指導者が思い浮かんでぞっとする。 チェ・ヒョンチョル/社会副局長