なぜ警察の「不祥事ラッシュ」は止まらないのか? 現地取材で見えた鹿児島県警"わいせつ事件"の隠蔽工作
■違法な情報漏洩か? 正当な内部告発か? 霧島署員によるストーカー事案が表沙汰になったのは、警察発表によるものではなく、フリーのジャーナリストにもたらされた内部告発がきっかけだった。冒頭に記した、「闇をあばいてください」の一文で始まる文書がそれだ。 送り主は、鹿児島県警の前・生活安全部長で、元警視正の本田尚志氏。告発文書には前述のストーカー事案のほか、同県枕崎市を所轄する枕崎署員の犯行が疑われる盗撮容疑事件の詳細と、それを県警本部が隠蔽しようとしていた内容が克明に記されていた。 枕崎署の巡査部長だった30代の男は、19年9月以降、何度も女子トイレに侵入し、複数の女性に80回以上の盗撮を繰り返した。事件が発覚したのは昨年12月。 枕崎市内の公園の公衆トイレを利用していた30代女性が個室扉の上部から差し向けられたスマホを発見、声を上げながら扉を開けたところ、白い車に乗って逃亡する男の姿を目撃した。 被害報告を受けた同署がトイレ付近の防犯カメラ映像を精査した結果、犯行時刻にその車両を使用していた捜査員が特定された。事件は速やかに解決すると思われたが、その後、なぜか捜査は終結する。 その理由について、本田氏が「本部長の隠蔽指示があった」と告発したのだ。内部告発文書には、署員による盗撮容疑事案の報告を受けた本部長が、「静観しろ」と指揮していたことが記されている。 この告発文書が郵送された2ヵ月後の5月31日、本田氏は警察の内部文書を外部に漏洩した罪(守秘義務違反容疑)で逮捕された。その後の公判手続きの中で、本田氏は「野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことが許せなかった」と主張している。果たして、この逮捕は正当なのか? ジャーナリストの青木理氏はこう見る。 「見極めなければならないのは、この問題が県警の言う"情報漏洩"なのか、組織の不正を内部の職員が告発した"公益通報"なのか?という点です。告発文書には目を通しましたが、これはどう見ても公益通報としか思えない。 県警は、告発文書の中にストーカー事案の被害者の氏名が記されていた一点をとらえ、情報漏洩と認定しましたが、逆を言えば、この文書の公益性を否定する要素はそこだけにしかなかったということ。その一点突破で逮捕に踏み切った県警と本部長の権力行使に暴走はなかったか、しっかりと検証しなければなりません」