なぜ警察の「不祥事ラッシュ」は止まらないのか? 現地取材で見えた鹿児島県警"わいせつ事件"の隠蔽工作
その翌日、女性は霧島署を訪れ事情を報告。このとき対応したのは署の警務課長で、「調査し、すぐ回答する」と彼女に告げている。だが、言葉とは裏腹に対応は遅かった。 霧島署へ相談に訪れた3日後、女性はクリーニング店に出勤していなかったが、この日も店の周りを車でうろつく巡査部長の姿が目撃されている。当時の心情について、この女性はこう明かしている。 「(巡査部長には)住所も知られている。考えると怖くてたまらなかった。署から音沙汰はなく、連日の出来事に仕事が手につかなくなった」(西日本新聞8月23日付の記事) 彼女が助けを求めたのは、店の常連客でもあった、霧島署とは別の署に勤務するベテラン警官S氏。S氏は霧島署や県警本部に捜査を促すなどサポートしたが、署の対応に不可解な点を感じていた。 通常、警察署に市民からの相談や被害の申告があると、署内の情報共有のために「苦情・相談等事案処理票(処理票)」を作成しシステムに登録するが、この女性の一件についてはそのデータがなかった。S氏がこう明かす。 「最初に女性が霧島署へ相談に訪れたときに応対した警務課長が、その日のうちに処理票を作成し、システムに登録したことは間違いありません。同署で処理票の決裁を担当する署員が、そのデータを確認し、同僚の氏名がそこにあったので『ビックリした』と本人が証言しています。 ただ、もう夜遅い時間だったので、その日は作業をせずに帰宅したそう。翌朝、その署員が決裁をしようとパソコンを開いたら、当該データは『消えていた』とのことです」 どういうことか? 「警務課長が作成・登録した処理票を削除する、という決断を下せる人物は署内では署長か副署長しかいません。処理票の決裁担当署員の話では、女性が署を訪れた後、署長と副署長と警務課長の3名が署長室にこもり、何やら話し込んでいた姿を目撃しています。データが消えたのはその後です。 さらに、霧島署は女性の勤務先周辺で巡査部長の車が映った防犯カメラの映像を入手していましたが、このデータも保存せずに消去されていたことがわかっています。ここからは推測ですが、身内の署員の被疑事案だから、もみ消そうとしたのではないでしょうか」(S氏) ストーカーの容疑がかけられた霧島署員ふたりは罪に問われることなく、今も現職警官のままだ。一方、被害女性は心に傷を負った。前出の警官S氏はこう話す。「パトカーを見ると、思わず身構えると本人(被害女性)から聞きました。自分が警察に訴え出たから、あの巡査部長が仕返しに来たんじゃないかと思ってしまうそうです」