中国新興EVの攻勢加速、海外メーカーに活路はあるか:2025年中国自動車市場
海外高級車ブランドも新技術採用で失地回復狙う
楽観的な販売予測を示すNEVメーカーと対照的に、高級車ブランドのメルセデス・ベンツとBMWは2025年の販売予測を10~15%下方修正するという。 中国の高級車市場は海外ブランドの寡占状態だったが、その構図が変わりつつある。メルセデス・ベンツとアウディの2024年1~9月の中国販売台数は、いずれも前年比で10%以上減少した。キャデラックやレクサス、ボルボといった2番手クラスの高級車ブランドも振るわない。 そんな中、国産ブランドAITOの「M9」が、販売価格50万元(約1000万円)以上の高級車カテゴリーで販売台数トップに躍り出た。これが海外ブランドに大きなショックを与えたのは言うまでもない。高級車市場では、もはやブランド力だけで販売台数を確保することはできなくなった。高級車のユーザーも新たなテクノロジーを求めている。 この状況を受け、海外の高級車ブランドも積極的に方針転換を図っている。アウディは2025年に投入する新型車の「Q5L」と「A5L」にファーウェイと共同開発した自動運転機能を搭載する。メルセデス・ベンツは次世代「CLA」で、最新の車載システムのほか、中国の自動運転企業と共同開発した自動運転機能を打ち出す。 中国での現地生産も進む。BMWは2026年から、遼寧省の瀋陽工場で次世代シリーズの生産を始める。次世代シリーズには、新たなデザイン言語を用いた外観とコックピットシステムを搭載する。メルセデス・ベンツは26年、BEV用プラットフォームを採用した「Cクラス」「GLC」「Eクラス」を打ち出すほか、大型SUV(多目的スポーツ車)「GLE」の中国生産も開始するという。
2025年の中国自動車市場はどうなる
中国政府が2024年4月末に打ち出したNEVへの買い替え補助金政策の効果で、1~10月のNEV販売台数は前年同期比33%増の977万台に急拡大した。しかし、乗用車については1.5%増と明らかな伸び悩みを示した。25年は買い替え補助金が半減される可能性もあり、NEV購入ブームはいったん落ち着くとみられる。 国際情勢の不確実性も、中国自動車市場に影響を及ぼすだろう。トランプ次期大統領の就任後、米国は中国に対して関税引き上げや産業規制を進めるとみられるため、中国経済の不確実性が増す可能性もある。欧州連合(EU)は、中国製BEVが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税の導入を検討している。 海外の高級車ブランドは、成長速度では中国のNEVメーカーに負けているかもしれないが、これまでに蓄積してきた自動車製造技術やブランド力は極めて高い。しかも、中国の新興NEVメーカーのほとんどは赤字経営に陥っている。一方、メルセデス・ベンツの2024年7~9月期決算によると、フリーキャッシュフロー(純現金収支)は23億9000万ユーロ(約3900億円)、純運転資本は287億3000万ユーロ(約4兆7000億円)に上る。海外高級車ブランドの潤沢な資産やリスク管理能力も無視できない。 2025年は、中国自動車市場をめぐる競争がさらに激化するだろう。完成車メーカーは新型車と技術力で競い合い、価格戦争はサプライチェーンにも波及していくと予想される。 *1元=約21円、1ユーロ=約163円で計算しています。 (翻訳・田村広子)