会社の害虫図鑑(16)イタバサミ虫 ワークライフバランス重視で管理職がメンタルを病む、解決策は実はシンプル
■ 「ワーク」と「ライフ」を天秤にかける罪 昨今の「働き方改革」ブームでは「ワークライフバランス」という言葉が言われるようになって久しい。この言葉には仕事の「ワーク」とプライベートの「ライフ」が入っており、両者のバランスが大切だというわけだ。 しかし、なぜか、このスローガンが使われる現場では、「ワーク」よりも「ライフ」の方が優先と解釈されることがしばしば。成長意欲の強い人材には「ユルイ職場」と思われるようになる。それは、仕事にやりがいを自ら見つけ、成長のために思う存分仕事をしたいと願う優秀な人材の離職を招くことにもつながりかねない。 そもそも「ワークライフバランス」を考えようとすると、「仕事」と「プライベート」を日常から天秤にかけ、不安定なバランスの中で妥協した選択を迫られる。「モヤモヤ」とした毎日を過ごすことになり、心理的安全性を損ないかねないのが問題である。 仕事を優先するのか? プライベートを優先するのか? イタバサミ虫が発生した職場の特効薬が「クラウド」である。 クラウドといっても、各種アプリケーションをインターネット経由で利用するIT用語の「クラウド」ではない。ここで言うクラウドとは、TOCを開発したゴールドラット博士が編み出した、対立する手段から両立する解決策を見つけ出すとても便利な手法だ。その構造は以下のようにシンプルで、たった5つのボックスを埋めて対立の構造を明らかにして、両立する解決策を見いだすのである。
■ 対立ではなく両立する解決策を作る「クラウド」とは まずは、DとD’と書かれている右側のハコの中に対立している手段を書く。この場合は、「仕事を優先する」と「プライベートを優先する」の対立だ。 次にDの手段で満たしたい要望を考えて、Bのハコに書く。この例では、「仕事を優先する」という手段で満たしたい要望は「仕事で成功する」ことだ。 次にD’の手段で満たしたい要望を考えて、Cのハコに書く。この場合は、「プライベートを大切にする」という要望である。その次にBとCのハコに書いた2つの要望から共通目標を考えてAのハコに書く。この例では「充実した人生」である。 図からも明らかなように、DとD’は対立しているが、真ん中の2つ、BとCの要望は対立していない。単に異なる2つの要望であり、それらを両立する方法が見つかっていないだけである。つまり、BとCを両立する解決策が見つかれば対立は解消することになる。 このクラウドという方法は、正式にはEvaporating Clouds(蒸発する雲)と開発したゴールドラット博士は名付けている。モヤモヤした雲がスッキリするイメージとして考えると良いだろう。 クラウドはワークライフバランスの解決に使えるだけではなく、「あちらを立てればこちらが立たず」の板挟みの状況にブレークスルーを見いだす汎用的なツールだ。しかも、「4歳の子どもでも使えるほどシンプルでやさしく、CEOが長年未解決の問題解決に使うほど奥が深い」と世界中で評価され幅広く活用されている。 YouTubeでも4歳の子どもの活用事例とともに解説しているので参考にしていただきたい。