「テレワーク可能なのに、あえて出社」 この判断は、経営者の怠慢なのか?
テレワークと出社のメリット、両取りしたい会社はどうすべきか
とはいえ、いくら本人がやる気に満ちあふれていても、物理的に出社や残業が困難な人は存在する。そういった人たちにとってテレワークはまさに福音であるから、「原則出社が正解」というわけでも、「テレワークが絶対正義」というわけでもない。 「テレワーク“も”可能な環境が整備されている」「出社もテレワークも平等に選択できる」といった具合に、「社会情勢や働く人の価値観に合わせた多様な働き方ができること」こそが、本当の多様性といえるのではなかろうか。 昨今、取り入れる企業が増えている手段が「ハイブリッドワーク」だ。従業員が週に数日出社し、残りの日はリモートで働くこの形式は、テレワークのメリットを享受しつつ、コミュニケーションやチーム連携確保が期待できる方法である。 例えば、リコーは2020年にテレワークを標準化。職種や仕事内容に応じて社員が自律的に働く場所を選択し、テレワークと出社を組み合わせ、効果的に対面・非対面を使い分けて業務を行うハイブリッドな働き方を促進している。 所属部門が認めた場合は転勤や単身赴任の解消、旅行先や帰省先で一時的な業務を行うワ―ケーションも可能とした制度改定に加え、バーチャルオフィスの導入や業務のデジタル化によるコストダウンを顕在化させた点などが評価され、2022年には「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞している。 したがって、経営者が「怠慢」と指摘されるとすれば、「テレワークか出社か」という単純な二者択一に陥ってしまい、「本来会社として必要な意思決定であっても、求職者や従業員に遠慮しすぎて決断できない状態」に対してではなかろうか。テレワークと出社のバランスを取り、個々の状況に最適な働き方を導入することが、これからのビジネス成功に不可欠な要素となるだろう。 (新田龍、働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役)
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