近江、コーチは夏準Vメンバー 「甲子園は生き物」の教え センバツ
第94回選抜高校野球大会で、京都国際の参加辞退により近畿地区補欠1位校から繰り上げ出場した近江(滋賀)が初の決勝進出を果たした。ナインの快進撃をアルプススタンドで見守るのがOBの小森博之コーチ(38)だ。近江が2001年夏の甲子園で初の決勝進出を果たした時の主将で捕手だった。自身が実現できなかった甲子園制覇へ、選手とともに歩んでいる。 【全試合あります! 球児の熱い戦いを号外で】 「01年も今も軸は守り。当時ピッチャーは3人いたが、今回は山田陽翔(はると)という絶対的なエースを軸に勢いがありますね」 小森コーチは「夏の準優勝は、多賀章仁監督の指導や多くの人に支えられてのもの。恩返しをしたい」との思いで指導者を志した。近江では主にバッテリーを指導する。 01年夏は竹内和也(元西武)や島脇信也(元オリックス)ら「3本の矢」と呼ばれた3投手の継投で勝ち上がった。小森コーチはタイプも性格も異なる3人をリードし、配球はもちろん、ピンチでマウンドに駆け寄った際の声の掛け方も変えるなど、細やかな配慮を積み重ねた。大舞台で5試合を戦った小森コーチが感じたのは「甲子園は特別な舞台で、試合は生き物。展開に応じた状況判断が大事」。特に山田と大橋大翔のバッテリーには試合での状況判断を磨くことを繰り返し求めている。 その指導が準々決勝の金光大阪戦で生きた。1点リードで迎えた七回の守備。1死二、三塁の危機で、山田は1ボールから低めに直球を投げ、スクイズをしようとした相手打者のバットに当てさせなかった。飛び出した三塁走者はアウトになり、ピンチを脱出。近江はその裏に追加点を奪って突き放した。 このスクイズの場面、山田は投球動作で左足を上げるタイミングをわざと遅らせ、三塁走者のスタートを察知。とっさに地面すれすれのボール球を投げた。小森コーチは「金光大阪の攻め方は分かっていた。スクイズを外す時はバットに当てられないよう、外角ではなくワンバウンドで投げる。捕手が止めてくれる信頼感も必要。通り一遍ではなく、細かなプレーも含めて毎日練習しているんです」 今大会は異例ずくめで、開幕予定前日の17日に繰り上げ出場が決まった。1回戦は宿舎に泊まらず、学校のある滋賀県彦根市を早朝に出て日帰りした。宿舎入りできたのは2回戦の前日だったという。「今の子たちは、とてつもない経験をしている。大会を通じて、まだまだ成長できるチーム」。タイブレークを含めて2度の延長戦を制して勝ち上がった近江。勢いそのまま、滋賀勢初の優勝へ突き進む。【伝田賢史】 ◇決勝戦もライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では、決勝もライブ中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。