「売掛金制度はホスト自身も被害者」歌舞伎町に通うライター佐々木チワワが語る、ホストクラブの実態 #ニュースその後
ホストクラブを利用した女性が高額な料金を請求され、それをホストが立て替える「売掛金制度」の返済をめぐるトラブルが問題視され、国会などでも議論されている。18歳からホストクラブに通うライターの佐々木チワワさんは、売掛金制度について「女性だけでなくホストも被害者」だと語る。ホストクラブの実態やホストと女性客との関係、売掛金制度のあり方について、佐々木さん自身の見解を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
ホストクラブは「有償の愛の安心感」を得られる場所
――佐々木さんはどういったきっかけでホストクラブに通うようになったのですか。 佐々木チワワ: 歌舞伎町に初めて行ったのは15歳のとき、2015年の大みそかでした。歩いているだけで超楽しかったです。ここでは学歴とか肩書きで見られない。ただ若い女であればいいし、名前すらどうでもいい。その感覚が居心地良くて非日常だなと感じたことから、歌舞伎町に通うようになりました。 18歳になってからはホストクラブにも行くようになりました。ホストクラブって初回は安くて1000~3000円ぐらいで、5~10分ごとに男の子が代わる代わる付いてくれます。「指名したい人が見つからなかったらまた初回料金で来てください」ってお店から言われましたね。テレビのバラエティ番組でいろんなお笑い芸人さんが出てるのを見て、おもしろいな好きだなって思ったらその芸人さんの単独ライブに行ってみようかなって思うじゃないですか。そういう感覚ですね。 私が初めてホストを指名したときは、ホストの方から「俺のこと知ってほしいから、一緒に水族館行こうよ」みたいな誘いが指名する前にあったんです。誰にでも同じことをしているのかもしれないですけど、そこまでしてもらったらお礼もしなきゃと思うので、「お店の外でわざわざ会ってくれたんだから、1回くらいお店に行ってもいいよ」ということで指名するようになりました。何度か会ううちに彼のことが好きになったから、ホストクラブという場のルールに従って、数万円払って彼に会いに行くようになりました。そこからホストクラブで飲む楽しさだったり、お金を使う楽しさだったりっていうものを知った感じです。今は酸いも甘いも噛み分けて、完全に夜遊びとして行ってるっていう感覚ですね。 ――佐々木さん自身は、ホストクラブの魅力はどういったところにあると思いますか。 佐々木チワワ: よくキャバクラと同じ構図で捉えられますが、キャバクラを“自分の居場所”っていうおじさんはいないと思うんです。でも、歌舞伎町でホストクラブを居場所っていう女の子はすごくたくさんいる。ホストって“関係性のプロ”なんです。友達とか親とか恋人に求めがちな関係性を、彼らは柔軟に提供してくれる。それを買うとホストクラブという場所や店のスタッフなどの環境に依存しやすくなる。そういう点は単純にキャバとジェンダーを入れ替えたものではないんですよね。 今、ホストクラブについてテレビで取り上げられることが増えていますが、コメンテーターの方々が「親の愛情が足りない」とか「友達とかを大切にしていればこうならない」みたいな意見を言うのはナンセンスだなって思います。そうじゃない。その関係の中で嫌なことがあったりするから、別のものを買っているんです。親なんてそもそも変えられないものなので、その愛情があればなんて話になるのは、すごく変だなという感覚がありますね。代わりにホストが親みたいな存在になっていたり、お金を払ってるからここまでしていいんだっていう有償の愛の安心感が得られたりしていることもあるんですよね。 ――ホストから得られる“安心感”とは具体的にどういったものなのでしょうか。 佐々木チワワ: 以前「俺、会社と学校辞めさせるの、めっちゃ得意だよ」って言ってきたホストがいたんですよ。どういうことか聞いたら、女の子たちの中には、親に言われてとか、とりあえず生活のためにとかで何となく始めた仕事で目標もなく稼いでる子もいる。彼女たちに対して「嫌なことでも俺のために働いたら、俺がその分幸せにするし、いろんなこと教えてあげられるよ」って言ったら、その子は仕事を辞めちゃうって。それは確かにあるなって思ったんですよね。 何か目的がある方が人生って生きやすい。ホストがそれを与えてくれる。自由がしんどい人間にとっては、「ある程度こうしたら幸せになれる」とか「こうしたらここで一番になれる」っていう指標があるのは安心するんだと思います。 だから、数万円でお気に入りのホストに会えるだけで満足という子もいるし、武士の心のように彼に忠義を尽くすことが幸せみたいな感覚の人もいます。私と彼がどうなりたいかじゃなくて、彼のためにお金を使って支えるのが幸せという価値観、それは忠義に近いと思うんですよね。 ――ホストクラブに通うお金を稼ぐために風俗などで働く女性も多いと聞きますが、それについてはどう思いますか。 佐々木チワワ: 家族のため、子育てのために風俗で働くのとあまり変わらないと思いますね。ホスト利用者からしたらホストに対する忠義は家族に対するものと同じようなものですから。 それに、風俗は究極の成果報酬制なので受験勉強に近いところがあると思うんです。受験勉強のときに効率良く勉強するのにハマるタイプの人っているじゃないですか。こういうタイプの人がホストにハマると、1円でも多く稼ぐために仕事を変えて、今まで100万しか稼げなかったけど120万稼げるところにやりがいを感じるようになったりします。やりたくない仕事でも、目標のために頑張れたり、限られた時間の中で効率良く稼げることに満足したりっていうのがあるんですよね。