なぜ弁護士は「黙秘」をすすめるのか? “冤罪”描くドラマ『アンチヒーロー』現実の事件との共通点
冤罪を防ぐ“思考”を
――『アンチヒーロー』など、ドラマやエンタメで冤罪事件を描く意義について、髙野弁護士はどうお考えですか。 髙野弁護士:日本に冤罪があるということは、今でこそ「袴田事件」などをきっかけとして、ある程度ニュースになり、一般の人も知るところになっています。でも、頻繁にニュースになるほど進展がある冤罪事件、再審事件が多くあるわけではない中で、 ドラマなどで常にこういう問題があることを描くのは、価値があることだと思います。 ――日々さまざまな報道に触れる中で、袴田事件をはじめ、過去の冤罪事件などのニュース、あるいは新たな事件報道を見たとき、どこに注目すると良いでしょうか。 髙野弁護士:何が原因で冤罪になってしまっているのかは事件ごとに違うので、「冤罪ではないか」と疑うべき基準があるわけではありません。ただ、過去も今日も、日本では逮捕された時点でもっとも報道が加熱します。逮捕された段階では、まだ罪を犯したかどうかわからない「推定無罪」の状態にあるのに、日本では多くの人が報道に触れた時点で「この人は罪を犯した」という前提で見てしまう。しかし、その奥に冤罪の事件があるわけです。今皆さんが見ているニュースで犯人とされている人に対しても、この人はまだ罪を犯したと確定したわけではないんだ、冤罪の可能性もあるんだという疑問は持たなければいけないんです。そういう意味で、できるだけ多くの方が「推定無罪」の思考を持つように変わっていってほしいですね。
田幸和歌子