【バレー】身長183㎝のルーキー山下裕子(共栄学園高) 「めっちゃいじられた」涙のスパイクを決めるまで
地道なトレーニングで夏場から成長
ルーキーを抜擢した中村文哉監督も「うれしい誤算だった」と振り返る大舞台での活躍。だが、それだけの過程は踏んできた。共栄学園中(東京)2年生時には全国中学生選抜に選ばれた逸材。だが、高校入学時は自らをコントロールできていなかった。 「体は大きくて、力強いスパイクは打っていたけど、筋力が全然ない。走る、投げる、跳ぶという動作が全然できず、思うように体を動かせていませんでした」(中村監督) 地道なトレーニングやボールを投げる練習から基礎固め。中村監督が「かわいくてしかたがないから、みんな(山下)裕子に厳しい(笑) 見ていておもしろいです」と語る3年生のサポートもあり、夏場から大きく成長した。10月の皇后杯関東ブロックラウンド2回戦ではのちに全日本インカレで優勝する筑波大を相手に、途中出場で大活躍。3枚ブロックにもスパイクを決め、その1ヵ月後の大一番での躍進につなげた。
20分のインタビューの間でも、まるであの激戦のコートに戻ったかのように次々と表情は変わった。明るく笑ったと思えば、眉をひそめて悔しがる。「顔の表情筋が豊かだなって、よく言われます。(代表決定戦での涙は)友達に、『なに泣いてんの』ってめっちゃいじられました」と照れ笑いした。 だが、3位決定戦の第3セットは例外だった。涙が乾くと、一貫として凛とした表情。3年生に腕を引かれた妹分ではなく、先輩たちと肩を並べてチームの先頭に立った。わずか2試合の間で、別人のような振る舞いだった。 「自分で映像を見て、こんなに険しい顔をしていたんだ、と思いました。中学生のときの自分が蘇ったというか、エースの自覚がある顔だなって。これからもあの気持ちや表情を継続できたらな、と思います」 次の舞台は全国の猛者たちが一堂に会する春高。その一球一球に、さらなる覚醒のヒントは隠されている。 山下裕子 やました・ゆうこ/1年/身長183㎝/最高到達点294㎝/共栄学園中(東京)/ミドルブロッカー 文/田中風太(編集部) 写真/山岡邦彦(NBP)、編集部
月刊バレーボール