自社グループのDX戦略を加速するためのIT組織の在り方と再編のポイント
IT組織の再編に向けた4つのモデル ここからは、Ridgelinezに多くの相談が寄せられているIT組織の再編について考えてみたい。親会社とIT子会社の戦略的な連携を実現する組織変革のモデルとしては、主に以下の4つがある。 1.IT子会社の親会社への吸収合併 文字通り、IT子会社の事業や機能を親会社に統合するものだが、このメリットとしては、組織を1つにすることでコミュニケーションの壁をなくし、DXを加速できる点が挙げられる。また、IT人材の不足が深刻化する昨今、給与などの待遇を親会社と同等に引き上げることで、優秀な人材を獲得できるというメリットもある。 2.よりハイレベルなIT組織の設立 従来のIT部門よりもハイレベルなIT組織とすべく再構築を目指すモデルである。IT人材の獲得競争が激化する近年は、IT子会社を親会社に吸収して待遇を改善しただけでは、十分な成果を得られないケースがある。このモデルでは、親会社以上の待遇を用意して、より高度なデジタル人材の獲得を目指す企業も少なくない。 また、ほかのパートナー企業と新たな合弁会社を設立するというモデルもある。ここには、パートナー企業が持つ独自のスキルやDXのノウハウの獲得、また新たな市場への参入という狙いもある。 3.IT部門の売却 このモデルは、IT部門やIT子会社を他社へ売却することで、親会社の資本効率の改善や非中核事業の整理、リソース配分の最適化を行うことを目的としている。この場合、IT戦略の企画といった付加価値の高い業務は親会社に吸収し、システムの開発や運用保守を担う部門のみを売却することで、従来の業務は売却先へのアウトソーシングとして継続することになる。 4.既存のIT組織体制を存続 従来のIT組織体制をそのまま存続させて、既存人材のリスキリングなどを行いながら、よりハイレベルなIT組織を再構築していく手法だ。ただし、このモデルでは外部のパートナー企業、プロフェッショナルの支援が必須となる。 これらの4つのモデルのいずれを採用するにしても、共通して押さえておくべき重要なポイントがある。それは(1)組織文化の変革や経営層のコミットメント、(2)人材のキャリアパスの明確化、(3)教育とトレーニング――の3点であり、これらの実践においてもCIOが重要な役割を担うことになる。 グループ経営におけるIT組織の最適化を実現するためには、最高経営責任者(CEO)をはじめとする経営陣の課題認識や要望を理解した上で的確な提案やアドバイスを行い、最終的な経営判断を各事業部およびIT子会社に伝達して、グループを横断した調整役を担う人材が不可欠となる。そこでは、やはりビジネスとIT双方の視点から組織全体を俯瞰できるCIOが適任であることに異論はないだろう。