「令和の米騒動」はかなり稀な現象?米流通評論家「不作とは言えない」心理学者「重要なものが曖昧だとうわさが流れやすい」
■なぜ店頭に米がないように見えるのか
米の生育状況に加えて、南海トラフ巨大地震の注意情報を受けての“買い込み”が重なった。「買い込む人が増え、その様子がメディアで報じられると、連鎖して購入量は増える。通常より自宅の米が多い人もいるはず」と述べた。 もうひとつの要因として「“単一原料米”に寄りすぎている」現状がある。「一般消費者が『○○県産』を欲しがるようになったが、大手卸売業者が流通系量販店に卸す段階で、チェーン店向けに集められる量がない。出せても数店舗程度の量にしかならないため、一定量が確保できるまで出荷できない」と、事情を説明した。 これらを背景に、米の需要は今期、10年ぶりに前年を上回った。「前年比6%、約11万3000トンが増えているが、ふるい下米が約19万トン減った分を補っているため、実質的な数字は下がっている。農水省は人口減と少子化で、年間10万トン減を推計している。ここまで上がるのは特異的だ」。 「米不足」には地域差もある。「東京や大阪はほぼないが、愛知にはちょっとだけある。なぜかと言うと、周辺に生産地があるから。新潟にも比較的残っていると聞いている」。そして「多少値段が上がっても、米はそんなに高くない」食糧でもある。「若い農家をどれだけ育てるかを考える必要がある。平均年齢が68歳を超えている状況を、少しずつ変えていくきっかけになった」と語った。
■「稲」「米」ではなく大好きな「ご飯」がなくなる不安がパニックを招く
立命館大学のサトウタツヤ教授が、パニック心理の観点から語る。「英語ではriceと呼ぶものを、日本語では『米』『イネ』『ご飯』と表す。常本氏は米とイネの話をしていたが、ご飯も重要な存在だ。社会心理学では、『重要なものが曖昧だとうわさが流れやすい』と言われている。消費者が米の有無がわからなくなると、重大な問題になる」と述べた。 人々は、植物であるイネや、販売される米よりも、食卓にのぼる「ご飯」を重要視する。「メディアで報じられると、『ご飯』を食べたいと買いに行く。店頭にないと『やっぱりなかった』となるが、あっても『本当はないかもしれないから買う』となる」と心理状態を解説した。 社会心理学では、自分の行為が結果を作り出すことを「予言の自己成就」と呼ぶ。「メディアの影響も強いが、ひとり一人が重要な問題と捉えることで、『予言の自己成就』が起きているのではないか」。