「草彅剛じゃなかったら時代劇を撮っていなかったかもしれない…」白石和彌監督が描く“誇りの美学”
草彅剛×白石和彌の強力タッグの時代劇『碁盤斬り』
『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した草彅剛が最新主演作『碁盤斬り』で演じるのは囲碁の達人であり、ある復讐に炎を燃やす浪人。 【画像】草彅剛「庶民派スーパー」に立ち寄り新妻の待つ新居へ 本作の監督をつとめるのは、『孤狼の血』で第42回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞、ほかにも第60回ブルーリボン賞監督賞を『彼女がその名を知らない鳥たち』で受賞した、白石和彌。自身初の時代劇となる。 草彅演じる主人公・柳田格之進は、かつてある冤罪事件により藩を追われ妻も失う。その真相を知ったものの、さらなる容疑をかけられ、娘は自ら犠牲になる道を選ぶ。武士の誇り、自身の潔白、娘の人生、復讐……囲碁と剣で描かれる戦いの緊張感は必見だ。 そんな作品を世に送り出した白石和彌監督に迫った。 本作『碁盤斬り』は、草彅剛演じる本作の主人公の名前と同じ「柳田格之進」という古典落語の演目を下敷きにしたものである。 「そもそも脚本の加藤正人さんが、無類の囲碁好きなんです」 というところが始まりだったと白石監督は語る。 「あるとき加藤さんが、『そんなに好きなんだったら「柳田格之進」やったらどうですか?』と言われたところから始まっているんですよ。そこから加藤さんが誰に頼まれるでもなくプロットを書いたところがスタートなんです」 仕上がったプロットが、白石監督のもとに届いた。 「落語の人情がありつつ、加藤さんオリジナルの要素が加わったエンターテインメントになっていました。僕自身、ずっと時代劇をやりたい思いもありましたので、『ぜひお願いします!』と」 ◆時代劇の型にはまらない撮り方、囲碁で描く「戦い」 白石監督にとって監督としては初の時代劇作品だが、奥田瑛二監督作品『るにん』(’06年)の制作に参加した経験が生きているという。 「奥田さんの、時代劇への豊富な出演経験があるうえでの型にはまらない演出が勉強になりました。 時代劇ってどうしても決まった型、フォーマットにはめたくなるのですが、奥田さんはそういうところがすごく自由だった。それが時代劇に限らず、今の礎になっている部分はあります」 時代劇作品は、基本的にはその時代の雰囲気を再現したセットで撮影することが多い。 「そもそも古い建物が残っていないですから、残っているもの、そしてセットの中でやっていくしかないのですが、そこは時代劇の長い歴史の中でたくさんのノウハウが作り上げられてきているわけですよね。とても勉強になりましたし、楽しかった部分です。 それを踏まえたうえで、型にはまらない部分をどう出していくかということを考えました」 現代劇と異なる部分はこんなところにもある。 「当然江戸時代は灯りも少ないですよね。ですから夜のシーンの見せ方は、どういうライティングにすると雰囲気を出せるのか、そういうことを考えるのも楽しかったです」