『きみの色』山田尚子監督、涙を流した鈴川紗由らキャスト陣からのサプライズプレゼントに「幸せ」と感激
山田尚子監督の最新作となる完全オリジナル長編アニメーション映画『きみの色』の初日舞台挨拶が8月30日にTOHOシネマズ日比谷で行われ、鈴川紗由、高石あかり、木戸大聖、やす子、山田監督が出席した。 【写真を見る】やす子、木戸大聖から花束のサプライズに「告白!?」とびっくり! 本作は、『映画けいおん!』(11)や『映画 聲の形』(16)など稀有な映像センスと、キャラクターの気配までを感じられるような繊細な演出で、いまや全世界から最も脚光を浴びるアニメーション監督の1人となった山田監督の最新作。人が“色”で見える高校生のトツ子(声:鈴川)が、ある日同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみ(声:高石)と、音楽好きの少年・ルイ(声:木戸)と古書店で出会い、音楽をとおして心を通わせていく姿を描く。上映後の会場を見渡した山田監督は、「足元のお悪いなか来てくださって、本当にありがとうございます」と感謝しきり。「今日やっと、皆さんに観ていただけるという実感が湧いてきました。観ようと思って来てくださった方がここに集まっていると思うと、胸がいっぱいです」と喜びをかみ締めていた。 4人のキャスト陣は、本作で声優初挑戦を果たした。高石&木戸と一緒にアフレコに挑んだという鈴川は、「3人とも初声優で、台本の持ち方もわからないし、初めましてなので3人とも緊張していて。アフレコを重ねているうちに、トツ子たちと同じように距離を縮められてよかった」としみじみ。高石も「できるだけコミュニケーションをとって、3人で試行錯誤しながらできた。そういったところも、この作品につながっている。最初は緊張していたものが、ちょっとずつ打ち解けていった」と劇中の関係性と重なるような絆を築けたという。 「オーディションでは紗由ちゃんが、トツ子と同じ髪型をしていて。生トツ子、実写版がいると思った」と目尻を下げた木戸は、「初日は僕らも初めで緊張していましたが、誰よりも監督が緊張していた」とにっこり。トツ子の寮のルームメイトである百道さく役を演じたやす子は、「もともと『けいおん!』が大好きで。自分のようないち芸人が声優をするというのは恐れ多かったんですが、貴重な機会に巡り会えてうれしい」と山田監督の作品に愛情を傾けながら、「監督からは『自由にやってください』と言われました。マネージャーさんからは『はい~』だけは言わないでくださいと(笑)。自由に楽しくやらせていただいて、監督は『こうやってください』というのもやさしくやってくださったので、初めてのアフレコが山田監督の作品だったから、怖けずに楽しく終えられることができました。すごくステキな経験をさせていただいた」と充実感をにじませていた。 メインキャラクターを演じた3人について山田監督は「幸せです」と切りだし、「やさしい声を持っているし、かわいいし、思春期の鋭さも持っている。本当にぴったりだなと思っている。実写版みたいに見える」と彼らに目を向けながらハマり役だと絶賛。「やす子さんには、アドリブも入れていただいた」と振り返りながら、「クラスメイトの声を入れるシーンで、『大太鼓、重たいよ』という歌を歌ってくださった。さくちゃんは吹奏楽部という設定だったんです。感動した」と裏話を披露した。役柄の個性を踏まえたアドリブを炸裂させたやす子は、その歌が「降りて来たんですね」と微笑み、「そこも(映画を)2回目、3回目観る時は、注目していただきたいです」とアピールしていた。 またこの日は公開初日を祝して、キャスト陣から山田監督へサプライズを敢行。木戸からは花束、高石からはこれまでの思い出を収めたフォトパネル、そして鈴川からは手紙が贈られた。ステージ上で手紙を読み上げることになると、「泣きそう…」と早くも声を震わせた鈴川。鈴川は「キャンペーンで同じ時間を過ごすことであだ名で呼び合ったり、監督とたくさんお話をして、新たな一面を知ることができてとてもうれしかったです。私は監督のえへへって笑う笑顔が大好きです。初めて完成した『きみの色』を観た時は、感動のあまり涙が止まらず、全身がふわふわして夢のなかにいるような感覚でした」と心を込めて手紙を読み進めていくと大粒の涙があふれ、「私はこんなに幸せでいいのかなと不安になるくらい、『きみの色』チームの皆さんと過ごす時間は、毎日がとても楽しくて充実しています。監督はトツ子たちキャラクターを愛しているのと同様に、私たちキャストのこともすごくかわいがってくれて。取材の時に『生まれてきてくれてありがとう』と言ってくれた時は、胸がいっぱいでまたまた泣きそうになりました。私たちも監督と出会えて、本当に幸せです。監督からいただいた言葉や体験は、私にとって宝物です。何者でもなかった私を、トツ子として見つけてくれてありがとうございました」とお礼の言葉で締めくくられていた。 涙を流しながらも一生懸命に手紙を読む鈴川を見守っていた山田監督は、手紙を受け取ると鈴川の背中にそっと触れるなど、温かなやり取りに会場からも大きな拍手が上がった。「私ばかり幸せみたいな状態になってしまって。恐縮です」と感謝した山田監督。「まだ会えるから。これからも仲良くしてほしいです」とお茶目に笑い、「これからどんどん成長していかれて、どんどん世界に出ていかれる方。忘れないでください」とお願い。鈴川も「私も忘れないでください」と相思相愛の想いを告白していた。 そして、9月2日に26歳の誕生日を迎えるやす子に向けたサプライズも用意されていた。花束を手にした木戸が「やす子さん!」と口火を切ると、やす子はまさか自分へのサプライズがあるとは思わず「ええ!告白されるの!?」とびっくり。木戸が「もうすぐお誕生日ということで、プレゼントのお花です!」と黄色い花束を渡すと、やす子はガッツポーズで「やったー!」と喜びを爆発させた。さらにやす子が「24時間テレビ」でマラソンに挑戦することになっていることから、木戸が「明日もかなり大変なお仕事というか。お体、無理せず。応援しています」とエールを送る場面も。「落とし穴以外のサプライズは初めてです」と会場を笑わせたやす子は、「ひとつひとつ目の前のことをコツコツとやってきたから、いまに繋がっている。引き続き、目の前のことをコツコツとやっていきたい」と抱負を口にし、「そこにマネージャーさんがいるんですが、26歳はたくさんお休みをいただけるとうれしいです!はい~」と笑顔を弾けさせていた。 取材・文/成田おり枝 ※高石あかりの「高」は、「はしごだか」が正式表記