「マダニに咬まれてうつる脳炎」致死率20%超も〝ニッチ〟な感染症のワクチン、なぜ開発?採算は取れる?
なぜニッチなワクチン開発?
こうした状況を前提に、同社はワクチンの接種対象者を、より多く見込んでいます。 「特に、林業・農業・狩猟等で山野に入る可能性のある職業に従事している方や、キャンプや山菜採りなどで山野に入る方が、マダニに咬まれてダニ媒介性脳炎ウイルスに感染する可能性があります」と指摘します。 また、英国、ノルウェー、フランス、ドイツ、ロシアを含むヨーロッパ、東アジアでも毎年1~1.5万件の発生が報告されており、「そのような地域に仕事などで渡航される方も感染の可能性があります」といいます。 一部の医療機関で接種可能で、成人の場合は1回0.5mlを合計3回、筋肉内に注射。2回目接種は1回目接種の1~3カ月後、3回目接種は2回目接種の5~12カ月後に実施します。自由診療になるので接種費用は医療機関側が設定しますが、1回あたり概ね1万5000円前後のところが多いようです。 ワクチンには有効期限もありますが、「本ワクチンの接種を希望される方のニーズにお応えできるよう、弊社は他の医薬品と同様に、需要と供給を日々把握し、ワクチンの安定供給に努めたいと考えています」ということでした。 このように、ある意味“ニッチ”なダニ媒介性脳炎ワクチン。製薬企業として、特定の感染症へのワクチンを「作る・作らない」はどう判断しているのでしょうか。 担当者は「直接のきっかけは、弊社が厚労省から開発要請を受けたこと」とした上で、「ダニ媒介性脳炎は感染後に重篤な転帰をたどる可能性のある病気ですが、有効な治療法がないため、弊社は本剤による予防が重要な役割を担うと考えています」と回答。 「ダニ媒介性脳炎の実態は十分に把握されていません。ダニ媒介性脳炎への感染で苦しむ方をひとりでも少なくできるよう、弊社は本剤の開発に取り組み、製造・販売をしています」 ニッチな病気でもワクチンが安定供給されるよう、「安定供給、医療従事者への適正使用情報の提供、啓発に取り組み、継続して予防医療の推進に努めてまいります」と話しました。