「マダニに咬まれてうつる脳炎」致死率20%超も〝ニッチ〟な感染症のワクチン、なぜ開発?採算は取れる?
患者数は多くないが接種数は?
ファイザー社の担当者は、「全世界で毎年およそ1~1.5万人のダニ媒介性脳炎患者が報告されています」「ダニ媒介性脳炎を診断するための検査の実施状況は国や地域により異なっており、患者数が過小評価されている可能性があります」と指摘します。 現在、製造・販売する成人と小児のダニ媒介性脳炎の発症を予防するワクチン「タイコバック」(一般名:組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン)は、「1970年代から欧州を中心に広く使用されていたもの」といいます。 オーストリアでは、ダニ媒介性脳炎ワクチンの集団予防接種が1981年から開始されており、「1979年に677例だったダニ媒介性脳炎症例数が、2022年には179例に減少したことが報告されています」とワクチンについて説明します。 厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと評価され、2019年9月19日に厚労省から開発要請を受けたそうです。 この要請を受けて、実施された臨床試験の結果などに基づき、今年からワクチンが国内でも販売されている、ということでした。 日本での症例は少なく、接種数としては多くを見込めないのでは、とも思われる、このワクチン。臨床試験などを実施した費用なども含め、採算は取れるのでしょうか。 担当者は「弊社では製品毎の開発費用や採算性などの個別情報は開示していません」とした上で、「ウイルスが国内に広く分布している可能性が示唆されている」ことから、ワクチンの必要性を説明します。 「これまでダニ媒介性脳炎の日本での報告は北海道のみですが、髄膜炎や脳炎などの中枢神経系の病気を発症し、その原因が明らかになっていなかった患者さんの血液や髄液を調査した報告では、東京都、岡山県、大分県で過去の感染歴を示唆するウイルスの抗体の陽性事例が確認されています」とします。 「栃木県、島根県、長崎県等においてもウイルス抗体を保有する動物が確認されています。そのため、今後北海道以外でもダニ媒介性脳炎を発症する事例が報告される可能性も否定できません」