「福井洞窟」9000年の人類の営み伝える遺跡、国の特別史跡に…「細石刃」折り重なって出土「すごい」
長崎県佐世保市の福井洞窟が10月、旧石器時代までさかのぼる遺跡では、初めて国の特別史跡に指定された。長年、市内の遺跡の発掘調査に携わった市文化財審査員会委員長の久村貞男さん(77)に、福井洞窟の特徴などについて尋ねた。(小松一郎) 【地図】福井洞窟の位置
――福井洞窟との出会いは。 「高校1年だった1964年、福井洞窟で行われた発掘調査を見学した。黒曜石から作られた細長い石器『細石刃』が折り重なって出土していた。当時の状態のままで出土しており、すごいと思った」 「見学後、佐世保市内の自宅近くの洞穴を調べたら、石の鏃が見つかった。土を掘ると土器や人骨が出てきた。専門家に送ったところ、発掘調査が実施され、私も高校生ながら参加した。そこは後に、岩下洞穴として県の史跡に指定された。考古学を志して大学で専攻し、岩下洞穴などの発掘調査に携わった」
――卒業後、佐世保市教育委員会に入ったのはなぜか。 「故郷に戻り、佐世保の考古学を発展させるのが私の使命と思った。在職中は縄文、弥生、古墳時代の遺跡のほか、江戸時代の窯跡なども発掘調査した。福井洞窟があった吉井町と佐世保市が2005年に合併したため、福井洞窟の再発掘調査を計画。退職後の12~13年、市教委による発掘調査が実現し、専門指導員として現場でアドバイスした」
――福井洞窟の特徴は。 「福井川の浸食で形成された砂岩洞窟で、間口16・4メートル、奥行き5・5メートル、庇高4メートル。約6メートルの堆積に地層が15層あり、最も下の15層(1万9000年以前)から4層(約1万6500年~1万6000年前)までが旧石器時代、3層(約1万6000年~1万5300年前)から1層(約1万年前)が縄文時代。旧石器時代の終わりから縄文時代の始まりまでの約9000年間にわたる人類の営みを伝えているのが、最大の特徴。旧石器時代から縄文時代への移り変わりを詳細に伝える唯一の史跡だ」