「福井洞窟」9000年の人類の営み伝える遺跡、国の特別史跡に…「細石刃」折り重なって出土「すごい」
――主な遺構、遺物は何か。 「13層(約1万9000年前)では、細石刃のほか、玄武岩の平らな面を上にして敷いた『石敷』が見つかった。13層と12層(約1万8000年前)などでは炉跡が確認され、炉の周りには石器もあった」 「3層と2層(約1万5200年~1万4700年前)では、旧石器時代のものと考えられていた細石刃とともに国内最古級の土器も出土した。また、発掘した土の中からは、サバなどの魚類やイノシシなどの骨の破片が確認された」
――遺構、遺物から考えられることは。 「石敷は洞窟の出入り口で見つかっており、地面がぬかるむのを防ぐために設けたのではないか。細石刃は槍の先端につけて狩りで使うなどしていたのだろう。炉で食物を加熱して食事し、暖を取りながら石器を作っていたと想像される」 「食べ物の調達は、山から海にわたっていた。福井洞窟は丘陵部と低地の中継地みたいな場所で、交通の要衝だったのだろう」
――21年に開館した「福井洞窟ミュージアム」の設立にも関わった。 「土器の展示に向けては、出土した破片のかすかな湾曲や文様の位置などを手がかりに復元を進めた。破片のレプリカを接合し、欠損した部分は樹脂で補って展示した。破片を目立たせるため、透明な樹脂を使っている。発掘調査の際に、6メートルもの地層の表面に薬品を塗って剥がし取った『土層剥ぎ取り』も展示している。ミュージアムで福井洞窟の魅力を知ってほしい」
◆ひさむら・さだお=佐世保市出身。国学院大で考古学を専攻。市教育委員会の文化財専門職員、理事、福井洞窟調査整備検討委員会の考古学専門指導員などを歴任し、2020年から市文化財審査員会委員長を務めている。趣味はアユ釣り、街道歩き。